2020年2月11日~2020年3月10日締切分

特選1
マスク取り梅の香りを愉しめり   西本陽子

この時期、新型コロナウイルスを詠んだ句が多くなって来ています。 しかし、これだけ世間を騒がせ人々を家の中に閉じ込めている疫病を一句 にまとめようとすることは中々難しいことです。そんな中で掲句は、ウイルスのことなど言わずに、 それを忘れさせてくれるような詠み方をしています。 俳人はマスクなど取り去り、広々とした梅林で梅の香りを楽しむべきなのだという当たり前のことに気づかせてくれる句です。

特選2
雛流すためらひをるをそと押して 山崎圭子

雛流しの句です。お雛様を海や川に流すことによって災厄を払うという風習が昔からあります。仲春の季語です。流されるお雛様は、古雛であったり、供養した後の古人形であったり、紙製や陶製であったり様々です。この句においては、お雛様を流すことをためらっている 小さな女の子をお母さんが優しく手を差し伸べて一緒にそっと押してあげているのだと鑑賞しました。 省略を効かせた高度な写生句です。

特選3
人避けて春愁深くなるばかり   竹内万希子

拙句「群衆の一人とはなりサングラス」を思いました。誰にでも、時々人に会うことがすごく億劫になることはあると思います。しかし、孤独になりたいと思って人と会わずにいると段々とたまらなく人恋しくなることも事実です。人間とは勝手なものだと思います。 作者も人払いをして一人きりになっているうちに段々と春の憂いが深まって来たのではないでしょうか。 人は一人では生きていけないものなのです。

入選1
【21】日にまかせ風にもまかせ若布干す 武田順子

入選2
【42】男しか詠めぬ句もあり春障子   敷島鐵嶺

入選3
【93】絵心のあらば春風何色に     迫田斗未子

入選4
【94】ビル街に残れる商家雛飾る    長谷阪節子

入選5
【147】音大の庭の囀りビオラ和す    野村親信

以下、次点句です。

【3】高らかに開かるる門入学す     黒岩恵津子

【4】梅見頃されどこの磴高すぎる    篠原かつら

【14】波止越ゆる波の途切れず春嵐(--連続--)巻木痺麻人

【15】ごはごはと行の初日の紙衣かな  阿部由希子

【31】風船を配るしあはせ頒かつごと  平田冬か

【32】路地暗し外灯のごと辛夷咲く   高橋宣子

【35】ふかふかに籾殻貰ひ牡丹の芽   山崎圭子

【37】遠山は雲脱ぎ初めて山桜     村手圭子

【48】成らぬとはどの木も言はず成木責 朝雄紅青子

【51】日輪の力漲り寒明くる      中野勝彦

【52】恋の句を詠みたく詠めず四月馬鹿 竹内万希子

【61】初雪の降りみ降らずみすぐ消ゆる 壁谷幸昌

【67】三川の集まる処菜の花黄     篠原かつら

【68】疫神を祓へと賜ばる桃の酒    斎藤利明

【70】懐手解きて骨董鑑定す      武田順子

【78】GAFA駆使せる孫頼り紙を漉く   古谷彰宏

【83】早や青きものの覗ける末黒かな  平田冬か

【91】野を焼くや独活小屋の邉は遠巻きに 内田あさ子

【97】木の芽今グーからチョキへ開き初む 高橋宣子

【99】描かれし墨一色の寝釈迦かな   広田祝世

【101】ふかふかと萌え初む北の大地かな 西岡たか代

【129】春風のささやくやうな葉擦れかな 田島もり

    次回も誌友の皆さんからの投句をお待ちしています。