2020年3月11日~2020年4月10日締切分

特選1
一碧の空万朶なる花堤     山崎圭子

一と万の数字の対比による表現が効果的であり、かつ動詞を全く使っていない省略の効いた写生句です。長く続く堤に咲く満開の桜の上に広がる雲一つない真っ青な大空という光景の描写が気持ちの良い読後感を与えてくれます。色彩感覚に優れた一句です。

特選2
小枝もて漕ぎたくもあり花筏  大久保佐貴玖

作者は、水に浮かんでいて中々前に進まない花筏を見ているうちに一寸法師のような気分になり、思わず自分が乗って小枝で漕いでみたいなと思ったというのです。主情の強い句ですが、花筏の小ささと水の流れの緩やかさが分かり、作者の純真な気持ちが素直に読者に伝わって来ます。

特選3
時の疫の先見えぬまま花は葉に 斎藤利明

時の疫は「ときのえ」と読みます。流行病(はやりやまい)のことです。時の疫という言葉と花は葉にという季語の取合せが良いです。コロナウイルスを詠む句が増えています。私としては、季節の感じられる句を取るようにしており、たまたまコロナを取り合わせた句として完成度が高ければ取るというスタンスで選句しています。

入選1
【18】人智試さるる疫病花の冷え   黒岩恵津子

入選2
【19】要するに君が好きだと懸想文  木村由希子

入選3
【55】そこだけが明るくおはす花御堂 村手圭子

入選4
【116】春愁や鏡の奥に別のわれ   平田冬か

入選5
【140】春日向鋤き込む土の香りけり 西岡たか代

以下、次点句(添削句もあります)

【4】会者定離生者必滅花は葉に(--人思ひつつ--)西本陽子

【5】あれほどの乗込み今日は何処なる(--何処今日静か)中島 葵

【13】名札まだ一つもあらず菖蒲の芽    玉田ユリ子

【17】繙くは万葉秀歌茂吉の忌       壁谷幸昌

【21】出合ふ蝶いつもせかせか探し物    平田冬か

【23】何故に仏母在さぬ涅槃絵図      前田野生子

【32】高千穂の旅に夜神楽待ちにけり
     (夜神楽を待ちて旅の高千穂かな)小林久美子

【44】靴下を脱ぎ飛火野に青き踏む     斎藤利明

【50】芽吹く樹々囲む緑の相談所      長谷阪節子

【57】花の道途切れしところ歌劇場     小林恕水

【63】曙の大気押し上げ鳥帰る       田島かよ

【75】この国は地平線まで麦畑(異国なれ---)高橋宣子

【84】片栗の咲くよちひろの絵の色に    木村由希子

【85】借りて来し古書を開けば黴にほふ   和田容子

【91】産みの苦しみかに縺れ蝌蚪の紐    山崎圭子

【93】乗込みや岸の草木の濡れ光る     鳥居範子

【94】花あせび奈良も外れの石仏      近藤八重子

【96】モジリアニめける女の春を待つ(--春待つ女首長し)野村親信

【101】長汀の藻屑の中に蝿生まる      田島もり

【106】茎立の葉牡丹こんなドレス欲し    糸賀千代

【120】新しきフレーム櫛比裏畝傍
    (裏畝傍櫛比のフレーム真新し)   阿部由希子

【122】妖精の昇る階段ねじり花       近藤八重子

【123】戸を開けて納屋を燕に明け渡す    小林恕水

【127】漉き紙の干し板秩父路に並ぶ(--並ぶ秩父路に)和田容子

【129】ビヤホールかつてベートーベンの家  広田祝世

【130】花人は和服の遺影膝に抱き      小西俊主

【134】黄は高く紫低き花菜かな       平松文子

【135】マスク顔知り合ひらしと見詰め合ふ  井野裕美

    次回も誌友の皆さんからの投句をお待ちしています。