2024年3月16日~2024年4月15日締切分



特選1
虚子の忌にひらく椿子物語      たなかしらほ

元かつらぎ同人で、ホトトギス同人、伝統俳句協会関西支部長を務められた 千原叡子さんに関する句なので、「かつらぎ創刊95周年記念大会」直後すぐの 選句でもあり、この句を特選の一席とした。虚子忌は花祭りと同じ4月8日で あることは皆様ご存知だと思う。 俳号を付けたお礼として人形問屋「吉徳」 の十代目・山田徳兵衛さんから一体の女人形をもらった虚子は、「椿子」と 名づけて側に置いていたが、ある時、若く美しい叡子さんに差し上げた。 折から、虚子の俳小屋から赤い椿が満開であった。千原叡子さんは、虚子の小説 「椿子物語」の主人公のモデルだった。
<椿子に会ひたしと言ひ雛の客  千原叡子>(令和2年没)

特選2
江戸三の障子開けあり花おぼろ    平田冬か

「おぼろ」は夜に使う季語であるが、この句は「花おぼろ」であり、季語としては 「花」の傍題季語ということになる。つまり、夜桜のことである。奈良公園に点在する 奈良茶飯などでも知られる料理旅館「江戸三」の障子を開けて夜桜を愛でたのであろう。 固有名詞が有効に使われている。

特選3
余生とは今のことかも花ふぶく    稲垣美知子

この句に共感する人が多いのではないだろうか。人生の中で、いつからが余生 なのかは誰も分からない。今を生きている中で毎日の生活や人との交わりの中で 喜びや悲しみを経験するのだろう。花吹雪を眺めながら、ふと今は自分にとっての 余生なのかもしれないと作者は思ったのだろう。

秀逸1
【28】明日香野の光差し込む花御堂    阿部由希子

花御堂に差し込む光を詠んでいる。それは明日香野の中にあるお寺の花御堂なのだ。 明日香野という言葉によってやわらかい光を感じることが出来る。

秀逸2
【44】国生みの島一周の花の旅      武田順子

国生みの島、つまり淡路島を一周する旅での句だろう。海に囲まれた一周約150キロの 淡路島には、多くの桜の名所もあることだろう。「国生みの島一周」という表現に惹かれる。

秀逸3
【66】園丁に揺り起こさるる目借時    黒岩恵津子

春も深まってくる頃、どこかの公園でうとうとしている内に、つい寝入ってしまったのだろう。 「園丁に揺り起こさるる」という上五中七が絶妙に光景を捉えている句だ。

秀逸4
【111】行く春や嘗て花街神楽坂      和田公子

 

これも固有名詞の効果的な一句。かつて芸者の置屋などがあった花街に行く春を惜しんでいる のだ。神楽坂という言葉を句の最後に持ってきたことにより、はんなりとした情感が伝わる句となった。

秀逸5
【127】制札を倒さんばかり乗込めり    中島 葵

制札とは、禁令の箇条を記して、路傍や神社の境内などに立てる札のことである。 川か池の縁に立てられた制札を倒すほどに激しく乗込をしているというのだ。 飛沫まで目に浮かんで来そうだ。


入 選 句

【1】何気なき原に地獄の釜の蓋        中島 葵

【13】戸口にて人とぶつかる雪眼(雪目)かな  古谷彰宏

【17】虎杖を噛みつつ故山思ひけり       長谷阪節子

【26】比叡山高々とある厩出し         阪野雅晴

【29】室生路や一人静を摘まで置く       斎藤利明

【33】木の陰に帯を直すや花の宵        宮原昭子

【49】どの家も流れ若布干せる浦日和      田島もり

【50】ひざまづく砂あたたかく防風掘る     平田冬か

【54】桜貝金銀砂子なる浜に
        (金銀砂子なる浜に桜貝)   山﨑圭子

【68】しばらくはながめてをりぬ
        (無心にながむ)春の海    迫田斗未子

【76】大美和の杜へ途切れず花畳        阿部由希子

【88】名草の芽すぐに抜かるる出入口      中野勝彦

【100】毛刈り待つ羊身重の如きかな      木村由希子

【101】巣立鳥いつまで枝にゐ(い)るつもり  広田祝世

【109】御食の浦阿漕に拾ふ桜貝        山﨑圭子

【125】あともどりして又拾ふ桜貝       前田野生子

【132】塔頭のその一つより牡丹見る      前田野生子

【141】一山を下りてさくらと別れけり     迫田斗未子

【142】被災者に膝折る陛下あたたかし     たなかしらほ

佳 作 句

【5】折折に春を見つけて九十九坂       安田純子

【21】人住まぬ隣家を花の覆ひ(い)けり   津田つる子

【34】片想ひめく片割れの桜貝        小林恕水

【41】宇宙から見えさうなほど菜の花黄    田島かよ

【47】儀仗兵整列なせりチューリップ     碇 蜻蛉

【52】からませる指ほどくかに牡丹の芽    鳥居範子

【53】どかと足すもてなしの炭合掌家     古谷彰宏

【59】舟漕ぐにあらず蜆を掻いてをり     古谷多賀子

【81】ロボットに掃除任せて朝寝かな     近藤八重子

【113】子の未来月か火星か入学す      田島もり

【117】そよそよと明日香風受け仏生会    阿部由希子

【119】花筵へと行厨の宅配車        武田順子

【124】長谷六坊一目の舞台風薫る      渕脇逸郎

【139】風紋を崩す他なし防風掘る      中島 葵


純一郎吟

締切日を失念していたため、投句なしです