2021年11月16日~2021年12月15日締切分



令和3年の最終となる「新ウエブ句会」の特選句・入選句・次点句の選評をさせていただきます。
私の望む俳句は、「読者に対して自然に簡潔に句意が伝わって来る」句です。教訓めいていたり、 俗っぽ過ぎたり、今までにもありそうな発想と感じられる、所謂「狙い過ぎ」の句は、 「夏雲」で高得点であっても入選にならず、次点に留まっていると思います。 逆に次点句には、互選では一点であったり、全く選ばれていなかった句もあります。 写生を大切に句を詠むことを心がけていただきたいと思います。 私が今年実感したこととして、俳句において理想とする句会のやり方は、 「選者も含めて同じ所へ一緒に吟行し、その日のうちに句会をすることだ」 ということをお伝えしたいと思います。今年一年間、「新ウエブ句会」へのご参加ありがとうございました。何とか、 オミクロン株を含めて新型コロナ感染が収束して、来年は対面での吟行会、句会、 大会を実施できることを願っています。皆様、何卒お体に注意されて良いお年をお迎え下さい。

かつらぎ主宰 森田純一郎

特選1
俗語なるお句にも品位青畝の忌      広田祝世

我らが先師阿波野青畝は、平成4年12月22日に93歳で帰天されました。卒寿のふぐり、 どつかれて木魚のをどる、ポイ捨て御免合点、など凡そ伝統俳句にふさわしくない、 アッと人を驚かすような俗語を平然と句にしたことでも有名です。しかし、それらには初湯殿、 寝釈迦、息白しという季語が斡旋されていて、句としての品位は決して失われていませんでした。 青畝の忌日に、作者はそうした名句を偲んでいたのでしょう。

特選2
鮟鱇の七つ道具を腑分けかな       平田冬か

鮟鱇の七つの可食部分であると一般に言われる肉・肝・胃・卵巣・えら・ひれ・皮のことを 「鮟鱇の七つ道具」と呼びます。腑分けとは、臓腑を分ける、つまり解体をすることです。 一見グロテスクですが、捨てる所のないほど美味である鮟鱇のことをやや硬い言葉でユーモラス に詠んだベテランならではの一句です。

特選3
手描きなる下町マップ一葉忌       村手圭子

樋口一葉は、明治29年11月23日に24歳の若さで亡くなっています。「にごりえ」「十三夜」 「たけくらべ」などの小説で有名ですが、父の死去による生活の困窮、 また一家を支えるための小商いの失敗などによって、実生活は苦難の連続でした。 一葉の住んだ菊坂周辺の手描きマップが売られているそうです。

入選1
【54】今もなほ三越と決め歳暮来る      敷島鐵嶺

東京の人にとって、三越の包装紙は歳暮などの贈答品を送る時にステイタスを示すものです。 アマゾンの商品を宅急便が配達する世になっても、こうした格式は残して行くべきだと私は思います。

入選2
【94】三河弁喋る仲居や薬喰         木村由希子

「鮟鱇鍋仲居は肝を入れたがる」という峠の句がありますが、この仲居は大阪弁だったと思います。 掲句は牡丹鍋を仲居さんが三河弁でどんどん食べろと勧めていたのでしょう。

入選3
【【110】白磁めく凍雪掻かず永平寺      古谷彰宏

大晦日のNHK番組「ゆく年くる年」で良く放映される永平寺は福井県の雪深い地に立つ曹洞宗の総本山です。 厳しい寒さで凍った雪は白磁のような光沢を持っているのでしょう。

入選4
【133】見納めの句誌の表紙絵年惜しむ     吉浦 増

今年一年間「かつらぎ」誌の表紙は、コロナ後の澄み切った空と海を願った意匠にしました。 今月で見納めと詠んでいただき、感謝します。来年がより良い年となることを祈っております。

入選5
【159】捨て難き没の句惜しみ年惜しむ     阿部由希子

年惜しむ句が続きますが、こちらは句会に出した自信作が没になったが、自分では惜しいと思っている と詠まれています。こうした意欲を持つことは句作上決してマイナスにはなりません。

以下、次点句です

【10】吐息とも嗚咽とも聞く虎落笛        小林恕水

【27】甲斐も奥つるべ落としの湯宿かな      若松歌子

【28】冬帽子取りて深々参拝す          吉川やよい

【33】たつぷりと日差しを集め大根干す      吉浦 増

【38】平等に未来は白し日記買ふ         稲垣美知子

【39】ゆつたりと煙立つ山冬に入る        西岡たか代

【45】凍空に太白光増しにけり          角山隆英

【49】口ずさむ表紙の一句初暦          清水洋子

【50】ものぐさの半径二尺炬燵守る        近藤八重子

【55】マーライオン去年今年なく水吐けり     竹内万希子

【56】魚河岸の鉢巻の息白きかな(--男鉢巻息白し)小西俊主

【61】これほどの錦秋の森名を知らず       迫田斗未子

【65】ひとしきりお国自慢や薬喰         敷島鐵嶺

【74】日向ぼこ我が身充電する心地        田島かよ

【76】後ろより影法師来る枯木道         村手圭子

【79】老健をまづ伝へ合ふ初電話         黒岩恵津子

【83】細すぎる蔓にちぎれず烏瓜         阿部由希子

【86】日向ぼこしばらく何も考へ(え)ず      近藤八重子

【89】罅割れの見事なるかな鏡餅         角山隆英

【95】恐竜の骨格に添ひ煤払           山崎圭子

【106】採りてより一顆の花梨よく匂ふ       阿部由希子

【114】信号の赤の上には冬の月         内田二歩

【116】湯治場の薪堆く雪籠           斎藤利明

【119】しぐるるや12戸減りも増えもせず    宮原昭子

【125】年暮るゝ悔あるなしにかゝわらず     前田野生子

【126】卒寿の師まこと健啖薬喰         木村由希子

【130】参詣者引つ切りなしや大根焚       竹内万希子

【137】クリスマス児のなき吾も絵本選り     大久保佐貴玖

【139】万人の第九とどろく師走かな       巻木痺麻人

【142】半世紀経てマドンナの木の葉髪      野村親信

【144】ちりちりの切干大根日の匂ふ       吉浦 増

【145】張り干され戸板はみ出す猪の皮      平田冬か

【153】短日や一人迎へを待つ園児        野村親信

【156】父もまた和装の一家七五三        鳥居範子

【158】くすり道朴は裸木にておはす       森田教子


純一郎吟

【2】また増ゆる廃屋抱き山眠る

【44】着ぶくれてコリアンタウン抜け出せず

【75】車窓へと現るるは雪の高見山