2020年5月11日~2020年6月10日締切分

特選1
花は葉に百年経たるへそ碑文     小西俊主

西脇市の経緯度交差点標柱のことでしょう。インターネットで調べると、大正8年(1919年)の小学校数学教師の研究会に招かれた東京高等師範学校付属小学校の肥後盛熊氏が「ここは日本の中心に当たる東緯135度北緯35度の交差点」と指摘したとのことです。作者には西脇句会の幹事として毎年西脇俳句大会でお世話になっています。今年はコロナで当日大会はないですが、句は募集しています。「花は葉に」の季語が非常に効いています。

特選2
するするとするするするとさるすべり 敷島鐵嶺

さるすべりの木は幹の皮が滑らかなので猿も滑るという意味だと広辞苑にも説明されていますが、そのさるすべりを見事に俳句にしています。ひらがなですべて詠み下し、「る」が6音もあって、本当につるつるした感触まで伝わって来そうです。全く動詞を使っていないところも巧いです。この作者は最近になって「かつらぎ」で俳句を始めていますが、面白い句を作る人です。今後とも写生の心を忘れずに佳句に挑戦してもらいたいです。

特選3
暁光に夜行フェリーや遍路着く    長谷阪節子

暁光とは明け方の光のことです。お遍路さんたちを乗せた夜行のフェリーが本州から四国の港に着いたのでしょう。弘法大師が巡錫した四国八十八ヶ所の霊場を白装束に身を包み、白木の納経箱をかけ、金剛杖、数珠、鈴を持って「同行二人」と書いた笠を被って厚い信仰心から寺々を巡る本来の遍路という季語の持つ寂しさや哀れさを作者自身が心の中に共有しているからこそ読者に感動が伝わる句となったのだと思います。

入選1
【16】籐寝椅子足裏太平洋へ向け     村手圭子

入選2
【76】沖の灯へ向くバルコンに酌み交はす 迫田斗未子

入選3
【94】モーニングコールよ目白枝に並び  足立 恵

入選4
【120】声ひそめ水鶏叩くを待ちにけり  田島竹四

入選5
【124】虚子眠る谷戸へ誘ふ四葩かな   斎藤利明

以下、次点句(添削句もあります)

【6】疫病の平癒祈願や風薫る     黒岩恵津子

【10】万華鏡めく蜘蛛の囲の雫かな  小林恕水

【12】坂と路地ばかりの島や南風吹く 長谷阪節子

【17】初郭公朝刊とりに出でし時   古谷多賀子

【20】ウイルスは未だ何処かに雲の峰 田島かよ

【24】梅漬くる祖母伝来の塩加減   西岡たか代

【32】苑広しどの薔薇アーチ潜らうか 木村由希子

【33】更衣外出自粛のやつと解け   田島もり

【42】子の手すら触るるを拒む袋角  角山隆英

【44】父の研ぐ鎌のよく切れ草を刈る 糸賀千代

【45】天上の楽はかくやと囀れる   内田あさ子

【47】生家いま解体真近梅実る    巻木痺麻人

【49】あるときはふとゆつくりと走馬灯 大久保佐貴玖

【54】ほどほどといふ語通じず水喧嘩 竹内万希子

【62】あるはずのアンネの薔薇の見つからず 小林久美子

【66】里人の守る棚田の早苗かな   玉田ユリ子

【73】貨車はいま茅花流しの中通る(貨車通る--を靡かせて)
                  壁谷幸昌

【93】脱ぎつぷり良きも渋るも竹の皮 山崎圭子

【99】扇閉ぢ無言居士とはなられけり 平田冬か

【110】蛍狩り一番星の出始めて   玉田ユリ子

【118】夏兆す豊旗雲の落暉かな   西本陽子

【130】格好の水漬く枝ある浮巣かな 古谷多賀子

【133】夏帽子蝶のごとくにリボン揺れ 西岡たか代

【138】下宿屋の二階に掛くる青簾  大久保佐貴玖

    次回も誌友の皆さんからの投句をお待ちしています。