2023年1月16日~2023年2月15日締切分



特選1
防護服脱ぎし介護士春近し      巻木痺麻人

やっと新型コロナウイルス感染に収束の兆しが見えて来た。コロナ病棟のある 介護施設などでは、介護士の人が防護服を着て、厳重に感染予防をして身の回り の世話をしていたのだろう。やっと介護士の人たちも防護服を脱いで施設に入る ことが出来る喜びを春近しという季語で詠んでいる。 今の時代を生きる人に共感を呼ぶ句である。 春の訪れを待つ気持ちを客観的に詠みながら、読者に喜びを伝えている。

特選2
寒灯をひとつ残して家を出る     近藤八重子

寒灯という季語は、冬の灯に比べて寒々しい感じがする。先日吟行した当麻では、 當麻寺が冬牡丹、石光寺が寒牡丹と書かれていた。寒牡丹は自然のままに咲くもの を言うそうだ。寒い夜に家の中の灯りを一つだけ点けて外出したというのだ。 句自体にそれほど重い意味はないかも知れないが、淡々と詠まれているので却って 寂寥感が伝わる。この句の場合は、家出づるとせずに、家を出ると口語のままの方が良い。

特選3
改札を狭し狭しと戎笹         武田順子

十日戎の傍題季語である戎笹には、吉兆である小判や米俵などの縁起物がたくさん 吊るされてあり、その時期には今宮戎神社や西宮神社から持って帰る人を多く見掛ける。 ただでさえ持ちにくい戎笹を持って、寒い時期に着膨れて地下鉄などの駅の改札を 通り抜けることは一苦労だ。狭し狭しと畳み掛けて言うことによって、 その光景が目に浮かぶようである。俳句はリズム感が大切だとわかる一句である。

入選1
【7】嶺の奥なほ嶺のある薬喰        村手圭子

嶺の奥になお嶺のあるような山深い土地で牡丹鍋のような薬喰をしたのであろう。 この句の場合は、険しい尖った峰よりもやや低いところを言う嶺の方が合うと思う。

入選2
【8】誰彼に告げたくなりぬ初桜        清水洋子

初桜とは、春になって初めて咲いた桜のことである。吟行などでも桜を見つけたと 呼ばれることがある。作者の気持ちを素直に詠んでいるので実感が伝わる。

入選3
【17】納め針刺され蒟蒻ぷるるんと
      (蒟蒻にさせばぷるんと針納む) 鳥居範子

針供養の神事で刺される蒟蒻を詠んでいる。ぷるんというオノマトペが面白いと思ったが、 原句では主語述語がバラバラである。ぷるるんとしたのは蒟蒻なので添削した。

入選4
【37】寒林の学問の府に人いれず       野村親信

学問の府、つまり学府とは大学など学問の中心となるところのことである。 寒々しい木立の中に立つ学府は陋巷とは一線を画し、ひっそりと静まりかえっているのだろう。

入選5
【65】山焼を待ちつつ星を数へけり      高橋宣子

春先の天気の良い風のない日に野山を焼いて栄養分を豊富にすることを山焼という。 山焼を待つ間に空の星を数えたというロマンチックな句である。


以下、次点句(添削句もあり)

【4】殯あととは云へど蕨萌ゆ          長谷阪節子

【12】ねぢれ(ねじれ)紐めきてまんさく花開く  阿部由希子

【16】菰巻かれ蘇鉄もぞもぞ動きさう       山﨑圭子

(→もこもこともがく菰巻き蘇鉄かな という句があります)

【21】紀元祭賑はひ余所に御饌田へと(かな)   足立 恵

【29】捨て舟へ体当たりして乗込める
      (体当たりくらふ捨て舟乗込める)  糸賀千代

【33】言ふなれば(言ふならば)水の味なり白魚飯 田島もり

【35】寄居虫の宿替へゐるや忘れ潮        斎藤利明

【39】糸のつくままなる針も納めあり       鳥居範子

【43】逸れてゆき又つながりぬ野火の舌      清水洋子

   (→野火の舌触れ合うてまた別れゆく という句あり)

【46】鎧戸を開けて節分餅を撒く        前川 勝

【48】立てつけのよからぬ宿や(よろしからざる)薬喰  宮原昭子

【51】凍鶴の足替へる事ありやなし       前田野生子

    (→凍鶴の脚踏み替へて又凍てぬ があります)

【55】横たはる胸も顕に涅槃変         たなかしらほ

【67】一太刀に六腑現れたる鮟鱇かな      中島 葵

【68】鴨鍋に酔ひて湖風心地良し        阪野雅晴

【58】寒の水掛けられどほし苔不動       阿部由希子

【71】和歌山や大きな海に雲の峰        田島竹四

        →素直に詠まれていて良いです

【77】洗面器ほどの蒟蒻針納む         平田冬か

【78】旨酒の宇陀も奥なる薬喰         西岡たか代

【81】春愁や大道芸に笑めるとも        木村由希子

【85】盛り塩のやうにちよこんと残る雪     吉浦 増

【87】祇園行く節分お化けにも出会ひ      中島 葵

【90】恋みくじ開ける指の悴まず        木村由希子

【95】さざ波を閉ぢ込め今朝の厚氷       西岡たか代

  (→さざ波を閉じ込めしまま氷切る があります)

【102】簡素なる藁苞も賞で寒牡丹(冬ぼたん)  野村親信

【106】つと動く時の輝き薄氷          大久保佐貴玖

【112】入居待つ新築家屋風光る         和田容子

【116】あるかなき下萌探る親子鹿        角山隆英

【117】枝透けてまさに丸見え鴉の巣       足立 恵

【123】空海の眠れる山に寝釈迦かな       小林恕水

【126】ビルの街句碑の辺のみが冬ざるる     田島かよ

【129】少し靴濡らし浜辺の春惜む        糸賀千代

【130】起点とすバスの終点梅探る        平田冬か

【134】春が来たお洒落しなくちや歩かなくちや  阪野雅晴

【140】ぜんざいを食べて織田作忌なりけり    広田祝世

【143】藍商の卯建の家並燕来る         黒岩恵津子


純一郎吟

【24】やや距離を置きて眺むる紀元節

【103】久米寺の静けさが良し紀元節

【120】梅称へ尽くすに俳句短かすぎ