2019年6月11日~2019年7月10日締切分

特選1
噴水の割れて空から落ちにけり  大久保佐貴玖

噴水の句はこれまでにも山ほど作られており、新しい発見、新しい表現で詠むことは非常に難しいとされています。しかし、この句は見た瞬間にパッと取りました。噴水が割れるという捉え方をしたところにこの句の良さがあります。空から落ちるという表現と共にじっと噴水を見ていたからこそ授かった佳句です。

特選2
今年又梅雨に古傷痛みけり  平松文子

梅雨の句もまた詠まれ過ぎていて難しい季語の一つです。この句では、冒頭に今年又と持って来て、作者の辛さを読者に伝えることに成功しています。古傷がどのようなものかは知りませんが、おそらく梅雨時の湿気が良くないのでしょう。梅雨という天文の季語を用いながら身辺詠として読者の心に響く句となりました。

特選3
亡き人の秘話次々と青簾  西岡たか代

青簾という涼しげな季語を下五に置いていますが、この句のポイントは上五中七です。選句後に作者名を知って、あっと思いましたが、たか代さんのご主人はかつらぎ90周年記念大会直後に若くして急逝されました。知らなかったご主人の話を簾に吹く風を受けながら聞いていたのでしょう。客観的に詠まれていることに敬意を評します。

入選1
【33】北大のここ森深くリラの冷 広田祝世

入選2
【41】子規庵の投稿箱の梅雨湿る 阿部由希子

入選3
【56】誰吹くやこの草笛の音に憶え 角山隆英

入選4
【71】風鈴に醒め風鈴にまた寝入る 平田冬か

入選5
【116】大夕立たちまち土の匂ひ立つ 西本陽子

以下、次点句です。添削したものもあります。

【12】小さくとも折り目正しき落し文  平田冬か

【13】時計草針に長短なかりけり    平松文子

【14】疲れ鵜のくぐもり声や夜の鳥屋  篠原かつら

【21】林立の灰色のビル梅雨深し    糸賀千代

【28】夏雲やツンドラの川大蛇行    斎藤利明

【30】こもりくの谿けぶらする合歓の雨  近藤八重子

【32】笹百合の一輪森を明るうす    足立 恵

【42】白い椅子白いパラソル海青し(青い海)阪野雅晴

【50】梅雨激し日本列島水浸し     中島 葵

【62】明易しはや出漁の船の音(短夜や) 内田あさ子

【64】庭園にコンサート待つ夏の宵   若松歌子

【68】合宿や朝から麦茶煮る香り    黒岩恵津子

【74】まだ灯る瀬戸の灯台明け易し   西岡たか代

【82】嵐電の曲がれる先の茂りかな(軋みて曲がる)長谷阪節子

【86】蔵王堂仰げと涼み床几かな    村手圭子

【92】リフレッシュしたく一人の端居かな 玉田ユリ子

【93】黴の香の蔵に失せ物見つけたり  小西俊主

【107】七夕の吉野にひと日あそびけり  小林久美子

【111】滝壺の青は地球の青に似て    大久保佐貴玖

【115】背伸びしてゐしあの頃の書を曝す 木村由希子

【120】アイガーの影踏みしむる登山靴  竹内万希子

    次回も誌友の皆さんからの投句をお待ちしています。