2019年2月11日~2019年3月10日締切分

特選1
脱稿のまづものの芽に屈みけり  村手圭子

作者は、句評など結構頭を使わなければならない原稿を書き上げた後に外に出て、萌え出たばかりの小さなものの芽に屈み込んでいるのです。選者というストレスの多い仕事をしている人に共通する気分だと思います。副主宰という重責を担っていただいていることに改めて感謝します。

特選2
壷焼の傾ぐや上がる灰神楽  小林恕水

栄螺をそのまま火に掛けて調味料を加えて焼くことを壺焼と言いますが、不安定な形をしているので時々傾いて中の汁が灰にこぼれてしまいます。その時に舞い上がった灰の様子を灰神楽と言ったところにこの句の妙があります。高度な表現による写生句だと思います。

特選3
行く春や時差を戻して旅終はる  野村親信

海外旅行からの帰路に腕時計を日本時間に戻したのでしょう。欧米に出張の多い私には非常によく分かる句ですが、行く春という季語を斡旋したことがこの句を詩情豊かなものにしています。旅の終わりという寂寥感のある言葉に、行く春という詠嘆的な気分がよくマッチしています。

入選1
【44】何をどう聞いても無言マスクの子 木村由希子

入選2
【47】宙に浮く影はタンカー黄砂降る 平田冬か

入選3
【76】庭焚火薪高く積む参籠所 阿部由希子

入選4
【86】過ぎし日の母のたつきの針納む 長谷阪節子

入選5
【127】病む母を丸ごと包む日向ぼこ 竹内万希子

以下、次点句です(添削した句もあります)

【1】鳥帰る利尻礼文のその先へ   内田あさ子

【7】更けてより息づく祇園春灯   竹内万希子

【16】5か国語混じる寄せ書き卒業す 黒岩恵津子

【17】渺渺の水田を残し鶴帰る    小林恕水

【18】駐在所裏へ回れば年木積む   古谷多賀子

【24】曲がりしをそつと豆腐に針供養 鳥居範子

【30】千代さんの呉れし花種蒔きにけり 田島もり

【32】駄菓子屋にちよと寄り急ぐ遍路かな 本多亢子

【37】せつかちの我に似しかや雛奔る 篠原かつら

【42】春光を弾き水車のしぶき飛ぶ  迫田斗未子

【46】歩き方まづは教はる雪祭    竹内万希子

【50】葵紋やたらに目立つ雛調度   中島 葵

【62】目の合ひてしまひにくきやこの雛(添削あり)大久保佐貴玖

【66】誤りを探すは野暮よ懸想文    木村由希子

【80】金縷梅の絞り出すやに黄を吐きぬ 斎藤利明

【84】この雛を見たく京菓子買ひにけり 広田祝世

【87】四月馬鹿逝きたる人へ書く手紙  阪野雅晴

【90】肺活量如何ほどならん鳰     朝雄紅青子

【96】耕や多分明日も此処に居る(添削あり)近藤八重子

【125】残雪を掻くや湖北の秘仏開く  斎藤利明

【134】春光や路地を抜ければ大西洋  和田容子

    次回も誌友の皆さんからの投句をお待ちしています。