2019年12月11日~2020年1月10日締切分

特選1
宝船よべの敷皺寄るばかり   平田冬か

宝船とは、七福神や八仙(中国の民間伝承の八人の仙人のこと)が乗る宝物を積み込んだ帆船の様子を描いた絵のことで、それを正月に枕の下に敷いて寝るとよい初夢を見られたという季語です。今はほとんど見られない季語ですが、作者は一度実際に使ってみて翌朝に皺がたくさん寄っていたことを発見したのでしょう。

特選2
ちょとひねり楮一気に剥ぎにけり  古谷多賀子

和紙作りまでの作業の一つを詠んだ句です。12月の終わりから1月頃に刈り取って束にした楮を蒸し上げます。蒸し上がった楮は温かいうちにバナナの皮を剥ぐようにしてツルリと剥くのですが、これが簡単そうに見えて難しいそうです。この句では、その様子を具体的に詠んで臨場感伝わって来ます。

特選3
塗り替へし橋には寄らずゆりかもめ 前田野生子

ゆりかもめは、冬鳥として日本に飛来し、本州以南で越冬します。嘴と脚が赤く、羽は純白で群れをなしている姿は非常に美しいものです。別名の都鳥はもともと関東の呼び方です。「墨東や地下道出れば都鳥」(富岡桐人)があります。ゆりかもめは、塗り替わった橋の欄干には止まろうとしないのでしょう。

入選1
【3】ぼろ市の店主売る気のありやなし 木村由希子

入選2
【39】今ならばわかる説教根深汁   竹内万希子

入選3
【51】魚市の乾く糴台寒の荒れ    内田あさ子

入選4
【71】高畝の土黒々と根深かな    斎藤利明

入選5
【77】煙立つ和紙の里あり山眠る   古谷彰宏

以下、次点句です。添削したものもあります。

【9】聖夜劇ベール被れば即マリア    広田祝世

【15】料らるるとは知らぬ河豚旋回す  阪野雅晴

【19】棒立ちのまま着せらるる春着かな 小林久美子

【21】朴落葉一樹の嵩に驚きぬ     篠原かつら

【34】肩凝らぬ青畝の画集日向ぼこ   黒岩恵津子

【40】きつちりと黒髮束ねいざ歌留多  中島 葵

【44】寒肥や枝に声掛け根に感謝    小西俊主

【57】書痴の夫役には立たず煤払    糸賀千代

【59】成行きにまかす看取りや去年今年 竹内万希子

【61】辛うじて蜻蛉と分かる鵙の贄   壁谷幸昌

【66】深々と山に一礼斧始       西岡たか代

【76】笑顔良き人になりたやちやんちやんこ 阪野雅晴

【83】後継者激減嘆き和紙を干す    若松歌子

【89】毛糸編む十指それぞれ役ありて(添削あり)山崎圭子

【92】一茶房その隅つこに納め句座   村手圭子

【93】山国の農夫はさすが着ぶくれず  中野勝彦

【94】ぱんぱんに膨らむシート楮蒸す  古谷彰宏

【97】ピカソの絵思ふ出来栄え福笑   木村由希子

【105】寒鮒を釣る人塔を振り向かず  前田野生子

【112】普段着に戻る朝や松納     西岡たか代

【115】北風強く地蔵の涎掛けめくる  鳥居範子

    次回も誌友の皆さんからの投句をお待ちしています。