2020年6月11日~2020年7月10日締切分

特選1
緑蔭にまづは楽器を置きにけり  田島かよ

非常に素直に詠まれていてすっと読者に受け入れられる句です。強い夏の日差しを避けて、広々とした大樹の葉陰に来たのでしょう。演奏の練習をする楽器はバイオリンやチェロなど弦楽器を想像します。おそらく仲の良い音楽仲間が集まっていたのだと思います。想像を広げるとコロナで籠っていて久しぶりに会ったので話もしたいのでしょうが、まずは楽器を置いたのだとも考えられます。気持ちの良い写生句です。

特選2
手を食ませ荒鵜鎮むる鵜匠かな  篠原かつら

まだ人間に慣れていない鵜を荒鵜と呼びます。それだけ元気があって鮎も良く捕るそうですが、気性が激しく飼い慣らすことは一苦労だと言います。そんな荒鵜にわざと自分の手を噛ませて鵜匠は慣れさせて行くのでしょう。手を噛ませくれる鵜匠に段々と懐いて鵜は鵜飼で見事な技を見せるようになるのだと思います。長良川のある岐阜に住む作者にはこれまでも多くの鵜飼についての佳句がありますが、この句は秀逸の一句でしょう。

特選3
ひとひらの波となりゆく海月かな 大久保佐貴玖

透明でゼラチン質の海月は海面を浮遊しています。俳句では夏の季語となっています。海月を詠んだ句には「裏返るさびしさ海月くり返す」(能村登四郎)のように寂しさを詠んだ句がありますが、「かつらぎ」では比較的例句の少ない季語です。掲句は不思議な感じのする句です。「ひとひらの波」という詠み方、「となりゆく」としか言っていない省略法、それらが相まって幻想的な印象が余情となって読者に伝わります。

入選1
【18】男梅雨都心へ向かふ電車混む(--向かう--)若松歌子

入選2
【55】顔ぶれはいつもおんなじ溝浚へ     中島 葵

入選3
【72】田を植ゑて去らんとすれば雨の音(--植えて--)中野勝彦

入選4
【100】白壁をまがり城跡道おしへ      敷島鐵嶺

入選5
【106】法要の丁度潮時ラムネ出す      巻木痺麻人

以下、次点句(添削句もあります)

※今回は比較的多くの次点句を取っています。かつらぎウエブ句会では、新しい句、冒険句へのチャレンジを期待しています。もちろん、写生を忠実に行った自然詠、寂しさ・切なさと言った詩情を感じる句、諧謔・ユーモアのある句、都会生活者として季語を詠み込んだ句、などなど作句対象は色々とあって良いです。次点句の中にもレベルの高い句があると思います。

【5】丘の上の雲を目で追ふ牧の夏(--目で追ふ雲や---)迫田斗未子

【9】釈迦生まる無憂樹の花梅雨しとど  野村親信

【17】指先の置かれ戸惑ふ蟻の列    中尾好子

【26】水馬恋人背負ひスケートす    朝雄紅青子

【28】壁泉のポセイドン像手を広ぐ   阪野雅晴

【34】峰々の影絵のごとく梅雨曇り   中野勝彦

【36】甚兵の男料理やさしすせそ    近藤八重子

【37】帰省子のかんばせ窶れてはをらず 宮原昭子

【43】神農の狭庭に茅の輪くぐりけり  長谷阪節子

【44】節くれの指見せ合へる日向ぼこ  西岡たか代

【49】峠忌や吾も愛読の堀辰雄     広田祝世

【51】水盤や羊歯を配せば風生まれ  黒岩恵津子

【52】背流しやる思ひもし墓洗ふ    山崎圭子

【58】ビール苦し句会の選に漏れし夜は 木村由希子

【64】宮涼し縁切り神と知らず来て   前田野生子

【65】天空へ融けゆくお花畑かな    小林恕水

【66】モネの絵に溶けこむごとき昼寝かな 大久保佐貴玖

【69】ノートルダム修復誓ふ汗しとど  阪野雅晴

【84】舞殿の四面に揺るる笹飾り    若松歌子

【92】紅ひくを忘るる暮らし夏きざす  西本陽子

【94】曲がりたる枝そのままに登山杖  小西俊主

【95】袋角早や争ひの血の滲む     平田冬か

【104】峰入の宿場町いま法螺に明け  長谷阪節子

【109】注意札はたして蝮臭ひけり   角山隆英

【118】撫でられて歪に細る花氷    糸賀千代

【124】長々と主婦立ち話立葵     壁谷幸昌

【126】美濃なれや卯建跨ぎて松手入  篠原かつら

【130】草を食む鹿の子は四肢を折り曲げて 足立 恵

【140】すれ違ふ人皆優し大花野     竹内万希子

【141】蛍狩戻り路の闇恐きかな     村手圭子

【147】緑濃き離宮のそぞろ歩きかな   和田容子

    次回も誌友の皆さんからの投句をお待ちしています。