2021年7月16日~2021年8月15日締切分



特選1
汐匂ふ路地を曲がれば地蔵盆     西岡たか代

漁港の地蔵盆の様子を思います。地蔵堂にテントを張り、新しい よだれ掛けを掛けたお地蔵さんの前にお菓子や果物を供えます。 子供達は床几を据えてゲームなどをして遊ぶのでしょう。 地蔵菩薩は六道の衆生を教化し、救済する仏様であり、子供の 守護仏でもありますが、海の近くに育つ子供達の安全と健やかな 成長を祈るのでしょう。何かしら懐かしさを感じさせてくれる一句です。

特選2
水落ちて静かな夜となりにけり    大久保佐貴玖

稲穂が垂れ始める頃、水口を塞ぎ、田の尻の畦を切り、稲の成長に 不要になった水を落としてゆきます。水を落とした後の静かさだけを 詠んだ句ですが、省略により、しみじみとした秋の夜を覚えさせます。

特選3
満々と入るる田水や稲の花      小西俊主

稲の開花時に田に注ぎ入れる水を花水と言います。稲も花をつけるのですが、 受粉がうまくいかないと米は出来ません。稲への水分補給と空気中の湿度を 上げるためにたっぷりと田に花水を入れるのです。

入選1
【26】どこからも海眺め遣る避暑ホテル  森田教子

海辺のホテルに避暑にきたのでしょう。ホテルの部屋の大きな窓 はすべて海に向いており、さぞかし開放的な気分になれたのだと思います。 コロナ禍の避暑の過ごし方を詠んだ句とも思えるでしょう。

入選2
【29】料亭の提灯揺るゝ鵜舟かな     前田野生子

鵜飼を見物する屋形船には料亭の名前の入った提灯を吊るします。 提灯は鵜匠が綱を操って魚を鵜に捕らせる度に大きく揺れるのでしょう。 芭蕉翁の名句「おもしろうてやがて悲しき鵜舟かな」を思わせる 切ない気分にさせる句です。

入選3
【53】走馬灯音なき音が聞こえさう    和田容子

三夏の季語である走馬灯は、真ん中に立てたロウソクの炎が起こす 気流の動きで筒の部分が回転し、シルエットが浮かぶ飾りです。 仏事には関係ないものですが、何かしら供養のような感じがします。

入選4
【108】甲虫紐が緩めば飛ばんとす    中野勝彦

「ひつぱれる糸まつすぐや甲虫」という高野素十の有名な句がありますが、 この句も甲虫の習性をよく見て詠まれた写生句です。少しでも紐が緩むと 逃げようとする甲虫の悲しさが伝わります。

入選5
【137】昨日とは何処かが違ふ夜の秋   小林久美子

夜の秋は晩夏の季語です。昼はまだ暑いですが、夜になると秋の気配が 漂って来ます。日に日に肌に感じる風や匂い、湿り気などが微妙に違って 来たことを捉えた繊細な感覚で作られた句です。

以下、次点句です、添削したものもあります

【11】墓洗ふこの世の愚痴を一つ言ひ    清水洋子

【14】退職のあとも早起きほうせん花    近藤八重子

【23】胴長は亡き父譲り茄子の馬      近藤八重子

【24】陋巷のネオンに染まる流灯会     小林恕水

【30】段々に木々低くなる登山かな     広田祝世

【35】どうしても句意解けぬまま夜の秋   迫田斗未子

【52】十字路に来れば涼風真横より     たなかしらほ

【69】寺子屋の古民家今日は盆棚す     古谷多賀子

【73】朱雀門出でて大路へ黒揚羽      西岡たか代

【76】行者ではなけれど滝に打たれたき   中野勝彦

【81】ヨットの帆残照もろとも畳みけり   竹内万希子

【85】玉虫やなにかよきことありさうな   武田順子

【86】ピーマンを一個づつ売るキャンプ村  中島 葵

【92】札なくばただの岩場や滝涸るる    稲垣美知子

【96】賑やかに焙烙灸の興に乗る      竹内万希子

【102】琴坂の流れ濁れり梅雨出水(--も濁る--)阪野雅晴

【104】波とらへサーファーすつくと立ち上がり 竹内万希子

【112】甌穴に蟹の潜める岩畳        古谷彰宏

【117】腕高く上げて向日葵畑撮る      吉川やよい

【120】象の耳ぱたぱた動く極暑かな     木村由希子

【127】八月や今読み返す黒い雨       吉浦 増

【132】相乗りのバイクの二人とも水着    内田あさ子

【142】木洩れ日に睡蓮花をひらきけり    足立 恵

【154】膝くづすなき老刀自の端居かな    平田冬か

【157】天高し牧に馬柵の見当たらず     大久保佐貴玖

【162】仏壇に音の無き音魂迎へ       黒岩恵津子


純一郎吟

【5】女郎花一花一花の雨に濡れ

【55】雨安居のごとしや梅雨の美術館

【66】紅薄き女の絵見て汗引きぬ