2021年5月16日~2021年6月15日締切分



特選1
岬端の砲台跡やデイゴ咲く    清水洋子

デイゴとは、アメリカデイゴとも言いますが、俳句では海紅豆のことで、 高さが10メートルを超すマメ科の落葉高木です。沖縄県の県花であり、 7~8月に掛けて深紅色の蝶型の花を咲かせます。新宮に住む作者は、 加太の友ヶ島の砲台跡に咲くデイゴを見て作ったのでしょうか。 煉瓦造りの頑丈な砲台跡と真っ赤なデイゴとの色彩対比が強烈な南紀の 夏を表現すると共に戦争のない世を守らねばならないことを思わせます。

特選2
宍道湖を漁る舟や明易し     斎藤利明

宍道湖で有名なシジミ漁は、乱獲を防ぐため、舟での鋤簾を使っての漁は、 5~9月は朝6時~9時の間と定められているそうです。早朝からシジミ漁を行 う宍道湖に浮かぶ舟の様子を淡々と詠んでいますが、不要なことは言わず、 宍道湖という固有名詞と明易しという夏の季語によって光景を読者に伝える写生の見本のような句です。

特選3
手渡しでもらふ新聞明易し    篠原かつら

たまたま前句と同じ明易しの句となりましたが、こちらは身辺の様子を詠んだ句です。 新聞は朝早くから配達されますが、作者はその人から手渡しで朝刊を受け取ったのでしょう。 新しい新聞を新しい朝に受け取ることはとても気持ちの良いものです。手渡しという言葉が効いています。 身近なことを佳句にした好例だと思います。

入選1
【66】ビル底の僅かな空き地枇杷熟るる    田島かよ

都会のビルの谷間にもたわわに実るオレンジ色の枇杷の実を見掛けることがあります。 ちょっとした発見ですが、ビル底の僅かな空き地と表現したことによってその光景が まざまざと読者に伝わって来ます。

入選2
【70】毛を刈る間羊の顔を撫で続け       鳥居範子

羊の毛狩りをしている様子をじっくりと見て詠んだ句だと思います。抱き抱えられて バリカンで毛を刈られる羊たちは不安でストレスに襲われるので、ずっと顔を優しく撫でてやるのでしょう。

入選3
【97】あきらめも思案のひとつ髪洗ふ      迫田斗未子

ちょっと変わった髪洗うの句です。どんな事情があるのかは、もちろん知りませんが、 あきらめることも一つの考えだと思いながら一心に髪を洗っているのでしょう。

入選4
【102】十薬の陣地三角庭の隅          吉川やよい

これも十薬の句として珍しい表現だと思いました。庭隅の三角形の場所に十薬が 群れ咲いているのでしょう。作者は意図したのかどうか分かりませんが、十と三という数字が効果的です。

入選5
【133】蛍待つ峡は四五戸の灯るのみ       高橋宣子

蛍狩で山深い所へ出掛けたのでしょう。真っ暗な峡谷には都会の人工的な灯りは全くなく、 過疎に住む四五戸の家から灯りが漏れていただけなのでしょう。さぞや見事な蛍の乱舞が見られたことでしょう。

以下、次点句です、添削したものもあります

【1】只ならぬ葭の大揺れ行々子     古谷多賀子

【2】たくさんの頭の上に神(御)輿かな  大久保佐貴玖

【6】水鳥の影さへあらず梅雨の波止   竹内万希子

【15】隣合ふ社家と旅館や夕河鹿     前田野生子

【27】地の人に案内され来る清水かな   大久保佐貴玖

【30】はたた神真夜の我が家を揺さぶれり 村手圭子

【39】吾が家の此処が一番籐寝椅子    内田あさ子

【40】葦原に浮きては沈み行々子     中島 葵

【47】飛ぶと言ふより落ちるやう巣立鳥  広田祝世

【50】標的はのつぽ先生草矢射る     平田冬か

【51】光秀の夜討ちの如き夜光虫     野村親信

【59】青と白ミコノス島に夏が来る    阪野雅晴

【61】美濃なれや風鈴の舌すべて和紙   篠原かつら

【64】大方は待つばかりなり蟻地獄    木村由希子

【79】涅槃せる如くに散りぬ朴の花    前田野生子

【87】学園の大路の左右花樗       田島竹四

【106】全句集噛み締め峠忌を修す    竹内万希子

【110】夕河鹿外湯めぐりの道すがら    高橋宣子

【114】朴の花見つけ師に会ふ心地せり
         (--会へば--して)   和田容子

【120】まつさらな我になれさう若葉風   木村由希子

【126】郭公や尾瀬の歩板の彼方より    古谷多賀子

【128】畑に水遣れば飛び出す青蛙     小西俊主

【132】懇ろに稗植う農業試験場      中島 葵

【150】若き日の真率思ふ今年竹      黒岩恵津子

【151】軒に吊る玉葱幾つかは落ちる    古谷彰宏

【154】千枚の青田を望む一揆の碑     清水洋子

【155】掌から掌へ蛍火渡す母子かな    長谷阪節子


純一郎吟

【22】夏の風居留地跡を吹き抜くる

【135】梅雨しとどでんがらもちの届きけり

【138】袋掛星田の里を彩りぬ