2022年6月16日~2022年7月15日締切分



特選1
梅花藻を探す吟行水の旅           西本陽子

梅花藻と言えば、峠が好きだった醒井宿を思い出す。この句では、要らないことは 言わずに「梅花藻を探す吟行」と言い切っているところが良い。 さらに「水の旅」とぶっきらぼうに畳み掛けて、より作者の気持ちを伝えることに成功している。

特選2
パスカルの原理知らねど浮いて来い      木村由希子

浮いて来いとはお風呂嫌いの子供のために水に浮かせて遊ぶ遊具である。 パスカルの原理とは、密閉した静止流体への圧力の増加に対する物理的法則のことだが、 難解な原理とおもちゃの取合せが実に面白い。

特選3
白南風や隠岐に伝はるしげさ節        吉浦 増

しげさ節とは、島根県隠岐諸島に伝わる民謡である。YouTubeで聞いたが、 哀愁を帯びた切ない節回しに心打たれる思いがした。梅雨明け後の明るく晴れ渡った 空に吹く白南風によって救われる気分になる句である。

入選1
【45】人阻む一ノ倉沢岩燕              古谷彰宏

谷川岳で最も険しく、過去に多くの遭難者を出している一ノ倉沢に飛び交う 岩燕の逞しさを感じさせる句だ。

入選2
【53】梅雨じめり和紙にも墨の重さかな        大久保佐貴玖

じめじめした梅雨時には、和紙に揮毫した墨さえ重く感じることがあるのだろう。

入選3
【58】灼けてをりマルハとのみの捕鯨砲        内田二歩

元大洋漁業のマルハ(マルハニチロ)は、かつては捕鯨を主たる事業としていた。 切なさを感じさせる句でもある。

入選4
【80】鴎外忌没後百年孤高たり            野村親信

今年は鴎外没後百年である。陸軍軍医で作家だった鴎外は陸軍部内では孤高の存在であったらしい。

入選5
【102】なびく様妖精めきて猿麻桛          壁谷幸昌

晩夏の珍しい季語である猿麻桛は、とろろ昆布のように樹皮に付着して垂れ下がっているが、 幻想的で妖精のように思える。

以下、次点句、添削句もあり

【3】南部鉄製の風鈴音柔し
         (鉄製の風鈴音色柔らかし)   田島かよ

【8】鉤鼻のマッターホルン明易し          斎藤利明

【10】蜜豆やあたりさはりの無き話題        糸賀千代

【11】土埃蹴立て蹴立てて驟雨来る         小林恕水

【15】満天の星のしづく(しずく)や夜干梅     西岡たか代

【20】簷忍めくは石斛天狗茶屋           古谷多賀子

【21】一病を養ふ茅の輪潜りけり          平田冬か

【26】鬼灯の青き香に酔ひ市巡る          若松歌子

【28】月に手をかざせば回る踊りかな        古谷多賀子

【34】伏字なる俳誌を想ふ終戦日          清水洋子

【35】水族館深海めきて避暑心地          山﨑圭子

【38】滝めぐる赤目に忍者姿あり          阿部由希子

【50】デイゴ咲く宅地はかつて軍事基地       稲垣美知子

【66】心地よき水車のリズム青田風         西本陽子

【70】鬼灯やはち切れさうに膨らめり        森田教子

【72】草刈られ最後の香りはなちをり        中野勝彦

【74】峡の里人影見えず早苗かな          和田公子

【83】大山を映して植田広きかな
         (大山を映して広し植田かな)  和田公子

【90】多田姓の多き玉垣蟻の列           田島もり

【94】シャンデリア涼しカクテルグラス手に     たなかしらほ

【95】煉餌に星雲のごと金魚苗           斎藤利明

【100】鉾杉の天辺までも蛍舞ふ           広田祝世

【107】推敲の寸暇に融くるかき氷          森田教子

【109】砂まみれ海月を海に戻しやる         村手圭子

【112】片陰にそつと誘ひて立ち話          和田容子

【116】奈良町の路地に目高のカフェテラス      西岡たか代

【123】直角に寺町曲がる夏つばめ          前田野生子

【125】避暑散歩消えゆく砂嘴を戻りもし       鳥居範子

【128】寄る波にがうなひつくり返りもし       鳥居範子

【139】鰡飛べる海を眺めの遊歩道          鳥居範子

【142】ベンガラの残る町並夏暖簾          篠原かつら


純一郎吟

【42】繋留の鵜舟見てをり鵜小屋の鵜

【129】梅雨出水水都大阪沈めけり

【151】冷茶漬掻き込み又も暑に出づる