2022年3月16日~2022年4月15日締切分



特選1
晩春の一日飛鳥の人となる          吉浦 増

松江に住む作者は、吟旅で訪れた飛鳥の晩春に魅了されたのでしょう。 石舞台や亀石などを訪れ、いにしえから変わらない大和のまほろばを体感した喜びを 「一日飛鳥の人となる」とすっぱりと言い切ったことにより、魅力ある句になりました。

特選2
うららかや止まつて見ゆる観覧車      大久保佐貴玖

大観覧車は大きな輪に人が乗る箱を吊るして動力によって輪を回す遊戯施設です。 実際はゆっくりと動いているのですが、その大きさのために止まっているように見えます。 うららかな春の空に観覧車が浮かんでいるように作者は感じたのでしょう。

特選3
スニーカー色とりどりに遍路来る      村手圭子

遍路は、白装束に身を包んで四国八十八か所を巡る人たちだという先入観から カラフルな色彩のものは身に付けないと思っていました。しかし、今の時代の 遍路は色々な色のスニーカーを履いているのだとこの句によって納得しました。

入選1
【11】桃の花辿りて行けば粉河寺         角山隆英

「花と緑の吟行会」で訪れた粉河は素晴らしい場所でした。殊に、桃源郷の桃の花 と壮大な粉河寺に感動しました。中七の省略表現が潔い一句です。

入選2
【50】涅槃図の染みは衆生の涙とも        篠原かつら

涅槃図の真ん中に横たわるお釈迦様を囲んで嘆き悲しむ衆生たち。 その涙が涅槃図の染みとなっていると作者は感じたのです。

入選3
【68】何も彼もネットに頼る万愚節        たなかしらほ

インターネットが普及し、S N Sが登場して、虚実さまざまな 情報が日々飛び交う中、エープリルフールのジョークさえネットで知る時代になりました。

入選4
【82】教はりしやうには結へ(え)ぬ粽かな    近藤八重子

「粽結ふ」は初夏の季語です。米の粉の練ったものを草木の葉に包んだものを粽と 言いますが、教わった通りには中々うまく結えません。

入選5
【107】緑さす時代遅れの茶房かな         長谷阪節子

初夏の若葉の緑に包まれた昭和の風情を残した喫茶店を作者は訪れたのでしょう。 まるで高倉健がコーヒーを飲んでいそうです。

以下、次点句です。添削をした句あります。

【1】トランポリンせるかの桜鯛を糶る      武田順子

【13】羊飼へそう空堀の青草に          広田祝世

【15】濡れ縁に座り直して桜餅          近藤八重子

【22】春の夜や句に明け暮れの奈良泊り      吉浦 増

【24】オペラ座を出づればリラの月高し      広田祝世

【25】春惜しむ渋沢旧居飛鳥山          和田公子

【26】吾が為の切り株探す花堤          阪野雅晴

【33】妻争ひありし三山みな笑ふ         木村由希子

【36】雪吊解く今百本の縄垂るる         鳥居範子

【37】出番待つ間も所作稽古壬生念仏       前田野生子

【47】レトロなる橋また潜る舟遊び        中島 葵

【48】客居らぬ旅籠の媼畑を打つ         中野勝彦

【52】寄せたがる子に風船は逃げたがる      迫田斗未子

【57】春愁や未だ終らぬこの戦          和田容子

【61】うららけし(春うらら)
         赤子の十指みなひらく     中尾好子

【65】茎折れしままにて捩づる捩り花
       (茎折れてそれでも捩る捩り花)  近藤八重子

【66】しやぼん玉吹くや青空回り出す       大久保佐貴玖

【74】いつまでも仕舞へぬ老の春炬燵       田島竹四

【78】添削に生き返りし句イースター       田島もり

【79】山葵田は小石積み上げ堰となす       小西俊主

【80】妹より兄は泣き虫桃の花          平田冬か

【83】畑打つやオセロのごとく変はる土      中野勝彦

【96】花冷の膝に詩集を閉ぢ(じ)にけり     西岡たか代

【99】神の田を巡る一水芹を摘む         角山隆英

【102】白無垢の花嫁映ゆる池うらら       壁谷幸昌

【106】昇殿や御福賜る三輪の春         竹内万希子

【114】磯うらら名前つけたき双つ岩       平田冬か

【125】切通し吹き抜くる時風薫る        野村親信

【132】短文のはがき書き終ふ遍路宿       巻木痺麻人

【136】さはさはと麦の波追ふ麦の波       清水洋子

【144】春しぐれ明日香は石と水の郷       野村親信

【145】易々とビニール破り物芽出づ       中島 葵

【147】筍や筑紫の土を付けしまま        和田公子

【159】吉野路の雲居にふぶく山桜        阿部由希子

【162】嵯峨念仏決まりの所作のあるらしく    中島 葵


純一郎吟

【17】たかむちの蝶俳人を迎へくれ

【40】青き踏む心にひびくまで踏みぬ

【76】春宵やまだ見つからぬ稀覯本