2021年4月16日~2021年5月15日締切分



今月は、緊急事態宣言発令中で比較的時間があったので、夏雲システムで皆さんが選句された結果と私の選句結果を見比べてみましたが、 かなり違いがあるものだと改めて驚きました。俳句は作る句はもちろん、選ぶ句も人によって異なります。これを敢えて同一化すると全く 面白みのない句会になってしまいます。選句の違いも楽しんでいただければ良いと思います。 尚、互選で多く入選していた句で私が取らなかった句は、一句一句具体的には言えませんが、今までに見たことのあるような句、 また実感が湧かず、感動の伝わって来ない句だということを申し上げておきます。
今月分の投句の中に、ある著名な俳人の句と全くの同一句がありました。作者は、その句が頭に残っていて作ってしまったか、 あるいは本当に一から作ったと信じたいと思いますが、最近はインターネットの俳句関係のサイトが増えて来ていて、 季語さえ入れれば色々な人の句を見ることが出来ます。そうした中の句を自分の句として発表することは当然のことながら絶対にしてはいけないことです。というよりも、そんなことをして何の喜びがあるのだろうかということです。人間の命には限りがありますが、俳句作品は永久に残ります。 そして、句集にしたり、あるいは峠の全句集のように資料として後世に残るものもあります。小説や音楽作品と比べて短い詩型とはいえ、 俳句も純粋な創作活動であることに変わりはありません。最近のマスコミによる俳句ブームの悪い影響―すぐに点数や順位をつけたがるーに警鐘を鳴らすべく句評の冒頭に記しました。

かつらぎ主宰 森田純一郎

特選1
手花火の落ちて潮の香押し寄する  野村親信

海に近い家の庭先で手花火をしていたのでしょう。手花火が地面に落ちるという至近にある小さな現象から大海の 潮の香りという大きく遠い景を詠んだことにより、空間の広がりのある魅力的な句となりました。また、 潮の香りと共に手花火の残り香も香って来そうで、何かしら晩夏の物悲しさも感じられます。

特選2
石庭の砂寂として蟻地獄      前田秀峰

この句も大きな石庭に対して小さい蟻地獄を対比させた妙が感じられます。また、蟻地獄という名の通り、 静まり返った中に餌を待ち構えている不気味さの感じられるちょっと変わった蟻地獄の句になりました。

特選3
春障子幽し母の寝息かな      竹内万希子

幽し(かそけし)、つまり、かすかな母の寝息が障子越しに聞こえていたという句だと思います。 高齢の母親を気遣う作者の気持ちに、春障子というしっとりとした情感のある季語がよく合っています。

入選1
【58】紫に白線きりり杜若         山崎圭子

菖蒲、あやめ、と杜若の見分け方は、【ハナショウブ】花弁の根元が白と黄色、模様なし 【アヤメ】花弁の根元が白と黄色、網目模様がある【カキツバタ】花弁の根元が白一色で模様なし、という特徴を捉えた句です。

入選2
【75】まくなぎの何処まで付いてくるつもり 村手圭子

まくなぎ、つまりめまといは、その名の通り、夏の夕べにの道などを歩くと顔の周りにしつこいほどにつきまとう細かい虫のことです。 この句のような経験をした人は多く、共感される句だと思います。

入選3
【92】噴水が折り返し点マラソン来     稲垣美知子

マラソンの中間地点、つまり折り返し点は噴水の上がる場所なのでしょう。ランナー達は噴水を折り返しの目印にするだけでなく、 少しでも近くを回って乾きを癒そうとするのだろうと思います。

入選4
【97】雲海の棚引く山河神々し       吉浦 増

山の上から見下ろした時に雲が海面のように見える光景を雲海と言います。この句が何処で作られたものか分かりませんが、 雲海の見えるスポットから見た神秘的な眺望を詠んだ雄大な写生句です。

入選5
【139】上面を撫づるかに摘む一番茶    巻木痺麻人

茶の新芽摘みは、四月上旬から二週間ほどで摘んだ一番茶が一番良質とされます。 一番茶の茶摘の様子は遠くから見るとこの句のように上の部分を撫でているように見えるのでしょう。

以下、次点句です、添削したものもあります

【1】一隅に薄荷の茂る草を刈る     田島もり

【5】芥子の花ミニスカートを翻し    森田教子

【8】一斉に青空に向き山法師      角山隆英

【13】守宮来るコロナ籠りの吾に来る  村手圭子

【14】採りたてを次々と海女鉄板に
     (船料理海女採りたてを鉄板に) 田島もり

【36】遍路ゆく四国は雨の予報なる   敷島鐵嶺

【39】閻王の笏の光れる堂の闇
         (---笏金光る---)   前川 勝

【40】荷風忌や先斗町には立ち寄らず
       (---昼の---立ち寄らず)  迫田斗未子

【46】棘とりて初咲の薔薇供花となす  前田野生子

【53】水鉢のそれぞれに居るめだかかな 吉川やよい

【59】春風に紙飛行機の乗りにけり   中野勝彦

【64】先づ背筋伸ばし茶摘女休憩す   古谷彰宏

【66】引幕のなき農舞台蝶舞へり    長谷阪節子

【71】岩清水とりて小祠の手水かな   山崎圭子

【72】春愁と言つてはをれず米を研ぐ  中島 葵

【81】若き日の服普段着に更衣     前田野生子

【85】鳥除けの網天に張り白子干す   前川 勝

【88】世捨て人めき蓑虫の籠りけり   篠原かつら

【94】百幹の竹の打ち合ふ青嵐     中島 葵

【99】銀竜草魂抜けているやうな    近藤八重子

【105】両の掌に掬へばきらら夜光虫   長谷阪節子

【112】人目をば憚る如く毛虫急く    平田冬か

【117】忽と出で忽と消え去り二重虹   中尾好子

【118】街路樹のこれは何の木袋掛く   稲垣美知子

【122】潮岬青畝の句碑に南吹く     清水洋子

【128】朴の花そよぐ書斎の夕間暮    田島もり

【135】燕の巣かかるこの家子沢山    篠原かつら

【142】吾よりも母少し派手更衣     田島かよ

【144】それとなく見合切り出すソーダ水 斎藤利明

【148】道灌の像石斛の花指呼に     古谷多賀子

【150】句会なく吟行もなく春過ぎる   足立 恵

【151】垂るるさま手弱女振りや糸桜   壁谷幸昌

【154】一斉に見上ぐるなんじやもんじやかな 小林久美子

【157】虫眼鏡借りて確かや目高の子   古谷彰宏


純一郎吟

【24】吟行子今日は毛虫によく出逢ふ

【26】北の旅焦がるゝシラネアフヒかな

【108】地震を経し町に五月の花多し