2019年10月11日~2019年11月10日締切分

特選1
我が心閉ざすに似たり北塞ぐ   西岡たか代

北塞ぐとは、北窓塞ぐの傍題季語ですが、雪国における冬支度の一つであり、寒い風の吹きこみを 防ぐために目貼りをしたり、板戸などを打ちつけることです。雪国の家屋の北窓は小さいことが 多いですが、北塞ぐという表現からより暗く陰鬱な感じがします。その季語を我が心を閉ざすに 似たりと詠む作者の悲しさが読者の心に響く一句です。

特選2
一葉も買ひけむ小さき熊手買ふ   古谷彰宏

浅草おおとり神社で行われる一の酉の祭礼では、縁起物の熊手を売る店が立ち並びます。この神社 の近くに住んでいた樋口一葉は、貧しい暮らしの中で一番小さな熊手を買ったのでしょう。このような複雑な内容を見事に短い一句の中に詠み込んだ高度な写生句です。「買ひけむ小さき」という七音がこの句の真髄です。

特選3
立ち話まだまだ続く小春かな   和田容子

小春日和の日に近所に住んでいる奥さん同士が出会って立ち話をしていたのでしょう。仲の良い女性は、話を始めると永久に終わらないのではないかという位、長時間話続けます。何を話題にして いるのかは知りませんが、晴れ渡った空の下、穏やかな冬の一日ののんびりとした平和な様子が伝わってくる一句です。

入選1
【1】おでん屋の女将相談上手かな 小林恕水

入選2
【29】どの鉢も賞をあげたき菊花展 本多亢子

入選3
【57】熱帯魚ネオンサインの如光る 朝雄紅青子

入選4
【66】宮跡を守る大樹に鵙高音   阿部由希子

入選5
【103】寒紅や女盛りと申すべし   竹内万希子

以下、次点句です。添削したものもあります。

【3】天平の宮の遺構に秋思の歩    阿部由希子

【6】街騒に遠きホスピス小鳥来る   糸賀千代

【7】弁解は所詮弁解息白し      前田野生子

【8】冬ぬくし(初冬や)ゆるりと巡る美術展 西本陽子

【14】ルーブルの名画に降ろす日除かな  阪野雅晴

【16】ファインダーはみ出す滝の高さかな 朝雄紅青子

【23】ふっくらの日差し抱きしめ秋うらら 大久保佐貴玖

【34】鳥居より高きにおかめ酉の市    古谷彰宏

【37】後ろに目あるかラガーのパス回す(確か)中島 葵

【40】煌々と島は電照菊の秋       長谷阪節子

【45】一揆碑の立てる高きに上りけり   篠原かつら

【49】木洩れ日や残る紅葉の羅漢道    小西俊主

【60】血糖値少し高めや芋煮会      巻木痺麻人

【68】平らなる空港島に天高し      広田祝世

【80】青空に竿の届かぬ柿たわわ     西岡たか代

【82】トラピスト訪ひルルド訪ひ日短か  古谷多賀子

【88】四手揺らし三つ鳥居抜け秋の風   角山隆英

【104】口裂けて真つ赤なザクロ鬼子母神  平田冬か

【107】熊避けの鈴の音聞こゆ茸狩     中野勝彦

【109】夕霧の墓に供華なす枯尾花     角山隆英

【112】秋晴れの続き我が家に忌日来る   村手圭子

【114】小春日の銀座歩行者天国よ     野村親信

【118】内堀は石の置場や泡立草      本多亢子

【119】紅葉より抜きん出て立つ川燈台   鳥居範子

【125】艶艶と体色失せず鵙の贄      阿部由希子

【128】行列にひときは高き熊手行く    和田容子

【132】冬耕の筋目正しき伊勢平野     田島もり

    次回も誌友の皆さんからの投句をお待ちしています。