2026年8月16日~2026年9月15日締切分

森田 純一郎選(新ウェブ句会より)

特選 三句

  • 17

    補陀落の碑に佇めば鷹渡る

    小林恕水

  • 62

    旅人として仰ぎたる鰯雲 

    木村由希子

  • 92

    振分けに掛くる稲穂の匂ひけり 

    清水洋子

秀逸 五句

  • 1

    朴の実を恵みのごとく拾ひけり

    峰村ひさ子

  • 60

    沼杉の影きはやかに水の秋

    斉藤利明

  • 65

    伊予灘をうつすら染むる秋夕焼

    荻野隆子

  • 95

    説かるるは蕪村の写生獺祭忌

    古谷彰宏

  • 96

    草の露世界遺産の野に結ぶ  

    村手圭子

特選 三句

  • 特選1

    補陀落の碑に佇めば鷹渡る

    小林恕水

    補陀落とは熊野灘の彼方にある観世音菩薩の住むと言われる空想の山のことだ。中世に、そこを目指して単身小舟で海を渡ろうとする僧侶達がいたそうだ。僧たちの名が刻まれた碑に佇んでいる時、南方へ飛去する鷹の群れを見たのであろう。無量無辺の浄土を思う

  • 特選2

    旅人として仰ぎたる鰯雲 

    木村由希子

    芭蕉は奥の細道の始まりに「月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり」と記したが、人の一生もまた旅のようなものであろう。空に浮かぶ同じ鰯雲を見ても旅にある時には何か懐かしさのようなものを感じることもある。旅懐というべき心情であろう

  • 特選3

    振分けに掛くる稲穂の匂ひけり 

    清水洋子

    稲刈り後に束ねた稲を天日干しするために稲架と呼ばれる木組みに掛ける。「振分けに掛くる」とは、稲束を左右均等になるように掛けることだ。こうすることにより、バランスが保たれ、風通しが良くなって稲が早くよく乾くのである。芳ばしい香りまで伝わる句だ。 

秀逸 五句

  • 秀逸1
    【1】

    朴の実を恵みのごとく拾ひけり

    峰村ひさ子

    朴の花が開いた後、赤みがかった実を結ぶ。秋に紅紫色に熟し、袋香が裂けると赤い種が垂れ下が る。大きな朴の実を自然の恵みとして拾ったのだろう

  • 秀逸2
    【60】

    沼杉の影きはやかに水の秋

    斉藤利明

    沼杉は別名ラクウショウと呼ばれる高木であり。周囲に気根を出すことで知られる。池や沼の周りに生えるので、秋の澄んだ水面にその影をくっきりと映し出す 

  • 秀逸3
    【65】

    伊予灘をうつすら染むる秋夕焼

    荻野隆子

    伊予灘は、瀬戸内海西部松山沖の辺りの海域を言う。穏やかな伊予の海を寂しく短い秋の夕焼けが染めているのだ。うっすらと詠んだことにより情景が伝わる

  • 秀逸4
    【95】

    説かるるは蕪村の写生獺祭忌

    古谷彰宏

    「獺祭忌」とは、9月19日の正岡子規の忌日である。写生を説いた子規は蕪村の句を高く評価していた。子規から連なる写生句の師系を大切にしたい

  • 秀逸5
    【96】

    草の露世界遺産の野に結ぶ  

    村手圭子

    藤原宮址の広い野には朱の列柱の他、何もなく、ただ露の野が広がっているだけである。世界遺産となった野には、千三百年の時を経て同じ露が結ばれている

入選

入 選 句

  • 【2】

    草の絮飛びこんでくる無人駅

    中島 葵

  • 【5】

    足裏に磁石あるかに根釣人
    (・・・・・・如・・・)

    前田野生子

  • 【23】

    朴の木を見下ろしもして登高す

    山崎圭子

  • 【30】

    子に頼る暮らし望まず秋の雲

    岩見三七夫

  • 【31】

    放牛の寝そべる牧場天高し 

    糸賀千代

  • 【35】

    自販機の水売り切るる残暑かな
    (・・・・は売り切れ・・・・)

    安田純子

  • 【48】

    あきつ飛ぶ世界遺産の風に乗り

    平田冬か

  • 【52】

    小説の世界に遊ぶ夜長かな 

    村手圭子

  • 【55】

    鷹渡る分水嶺をすれすれに

    古谷彰宏

  • 【57】

    トレリスに風任せなる通草かな
    (・・・・通草ぶらぶら風任せ)

    斉藤利明

  • 【68】

    七草を探せど二つ見つからず

    井野裕美

  • 【72】

    威儀ただす白馬三山今朝の秋

    高橋宣子

  • 【78】

    禅林を映して秋の水となる

    木村由希子

  • 【83】

    秋日濃し校倉井桁きはやかに

    森田教子

  • 【89】

    庭祠燃やさんばかり櫨紅葉

    黒岩恵津子

  • 【94】

    鰯雲覆ひて余る余呉湖かな

    小林恕水

  • 【100】

    青空へ放るごとくに稲架を組む
    (・・・・ごとしや・・・・・)

    大久保佐貴玖

  • 【103】

    海目指す亀の子芥ものとせず

    広田祝世

  • 【107】

    探しものばかりしてゐて秋暑し

    田島かよ

  • 【110】

    あしなへを知りてか秋蚊まとひつく
    (・・え・・・・・・・・・・・・)

    前田野生子

  • 【113】

    石垣に隙多くして穴惑 

    木村由希子

  • 【115】

    大花野並ぶ列柱意味ありげ
    (意味ありげ列柱並ぶ花野かな)

    村手圭子

  • 【117】

    太古より来しかの穂絮とぶ宮址

    田島かよ

入選

佳 作 句

  • 【6】

    大夕焼機上の吾子はパリ目指す
    (パリ目指し子は今機上大夕焼)

    吉川やよい

  • 【10】

    棚田へと音高きかな落し水
    (音高く棚田一帯落し水)

    角山隆英

  • 【19】

    蔦伸びる寄りかかるものある限り

    吉浦 増

  • 【38】

    枡造りのかんなくずにも秋匂ふ

    岩見三七夫

  • 【43】

    火を恋ふや遠野に婆の民話聞き
    (火の恋し・・・・・・・・)

    小林恕水

  • 【44】

    月きれい朴の梢にかかる時 

    前田野生子

  • 【47】

    しづもれる藤原宮址昼の虫

    阿部由希子

  • 【73】

    ボーロかと芝にコロコロ白茸

    山崎圭子

  • 【75】

    秋出水地球滅ぶる兆しとも

    中内ひろこ

  • 【90】

    宮跡の道なき道の露を踏む

    宮原昭子


純一郎吟

  • 【15】

    富子さん現れさう秋の大宮址

  • 【67】

    あめんぼの水動かして進みけり

  • 【99】

    草の露最古の都址濡らす