2025年4月16日~2025年5月15日締切分

森田 純一郎選(新ウェブ句会より)

特選 三句

  • 71

    二階まで土匂ひくる穀雨かな

    黒岩恵津子

  • 115

    このあたりハケの源蛍待つ

    古谷多賀子

  • 51

    どこからも見えぬ浮巣をなほ探す

    迫田斗未子

秀逸 五句

  • 9

    羊の毛刈る人どこか羊に似

    山崎圭子

  • 24

    水替はり尾びれ良く振る金魚かな 

    安田純子

  • 34

    更衣身の不自由を嘆くまじ

    前田野生子

  • 61

    薄暑光空を塗りゐるキャンバスに

    田島かよ

  • 70

    鯉幟風のタクトにしなやかに 

    吉浦 増

特選 三句

  • 特選1

    二階まで土匂ひくる穀雨かな

    黒岩恵津子

    穀雨は晩春の季語で、二十四節気の一つ。陽暦では4月20日頃であり、雨が百穀を潤し、芽を出させる意味とされる。地に降る雨に春耕によってほぐされた畑土が窓を開け放った二階にまで匂ってくるのだろう 

  • 特選2

    このあたりハケの源蛍待つ

    古谷多賀子

    ハケとは、関東から東北にかけての丘陵山地の片岸、つまり崖地形を指す地形名で、特に武蔵野地域に多いとされる。ハケからの湧水が谷戸に流れ込むが、その始まりの辺りには蛍が飛び交うことだろう

  • 特選3

    どこからも見えぬ浮巣をなほ探す

    迫田斗未子

    浮巣という季語を見ると夏の訪れを感じる。峠が元気な頃はよく一緒に浮巣のある水辺へ吟行したものだ。雛を守るために見えにくい所に作る浮巣をなおも探すというこの句に大いに共感を覚える。写生の良さがある

秀逸 五句

  • 秀逸1
    【9】

    羊の毛刈る人どこか羊に似

    山崎圭子

    面白い句だ。動物の世話をする人はそれに似てくると聞く。私は「目鼻整ふ」の句よりこちらを好む

  • 秀逸2
    【24】

    水替はり尾びれ良く振る金魚かな 

    安田純子

    新しい水になって喜ぶ金魚を思う。「水替へて」では主語が人間になるのでダメで、この句の表現が正しい

  • 秀逸3
    【34】

    更衣身の不自由を嘆くまじ

    前田野生子

     俳句とは人生の喜びであり、常に前向きに生きようとする作者は俳人の鏡だと思う。更衣の句として新しい

  • 秀逸4
    【61】

    薄暑光空を塗りゐるキャンバスに

    田島かよ

    私が薄暑という季語を好むためか、この季語での句が多い。青空を描く画布に射す薄暑光を詠んで新しい  

  • 秀逸5
    【70】

    鯉幟風のタクトにしなやかに 

    吉浦 増

    空に泳ぐ鯉幟を詠んでいるが、「風のタクト」という表現に惹かれた。新たな発想により新たな句が生まれた

入選

入 選 句

  • 【6】

    新緑の境内深くなりにけり 

    井野裕美

  • 【8】

    軽鴨の子の「只」の字めける尻と足
    (・・・や・・・の字のごと・・・)

    吉川やよい

  • 【11】

    長安もかくや柳絮の朱雀門

    斎藤利明

  • 【20】

    緑蔭のベンチほど良く皆離れ

    平田冬か

  • 【26】

    山峡の落人の里朴咲けり

    清水洋子

  • 【29】

    オフィス街こんな所に鯉のぼり

    迫田斗未子

  • 【30】

    よく見れば雀隠れに動くもの

    中島 葵

  • 【39】

    虹消えてはかなき彼の事をふと

    小林恕水

  • 【40】

    軽暖の藺町鍛冶町紺屋町

    村手圭子

  • 【41】

    花ずおう以外禁色知らざりき

    広田祝世

  • 【48】

    吉野いま光の坩堝柿若葉 

    斎藤利明

  • 【49】

    大勢と待つ万博の大夕焼 

    荻野隆子

  • 【56】

    仁王門くぐり壺阪山青嶺 

    阿部由希子

  • 【64】

    新緑や今も秘境の平家谷
    (・の・・・・・・・・)

    吉浦 増

  • 【72】

    毛を刈られ目鼻整ふ羊かな

    山崎圭子

  • 【76】

    縄電車蹴散らしてゐる花畳 

    中島 葵

  • 【81】

    遡上せるさまに大河の鯉幟

    古谷彰宏

  • 【89】

    花終へし老木撫づる庭師かな

    黒岩恵津子

  • 【93】

    著莪の辺にひそと澤市霊魂碑 

    武田順子

  • 【101】

    届かざる御手には埃お身拭

    宮原昭子

  • 【113】

    筍の皮も大事と洗ひけり

    古谷彰宏

入選

佳 作 句

  • 【5】

    ショーのごと尾鰭振りくる黒金魚
    (黒金魚ファッションショーの来る如し 阿波野青畝 平成2年「宇宙」所収あり)

    村手圭子

  • 【10】

    こでまりやゆるく枝垂れてゆるく揺れ
    (・・・の・・・・・・・・・・・)

    中内ひろこ

  • 【14】

    あれこれの屋台の匂ひ園薄暑

    中島 葵

  • 【17】

    揺るる葉に光さざめく若葉風

    栗原栄一

  • 【27】

    モネ想ふ五月の庭となりにけり

    稲垣美知子

  • 【38】

    岩にちと片足掛けて清水汲む 

    大久保佐貴玖

  • 【42】

    一病を吾の息災に薬の日 

    武田順子

  • 【50】

    山の端の朝日映せる代田かな

    植松順子

  • 【57】

    白煙の上がるバチカン聖五月
    (バチカンに上がる白煙聖五月 酒井叡子5月20日塩の道句会 純一郎選あり)

    小林恕水

  • 【59】

    白南風や丸き地球の喜望峰
    (・・・地球は丸し・・・)

    高橋宣子

  • 【66】

    池に落ちさう青梅の枝のしなふ 

    森田教子

  • 【68】

    青空に滲めるごとし花樗

    木村由希子

  • 【90】

    万博の上に仁王立ち雲の峰
    (・・その上に立ち・・・)

    前田野生子

  • 【102】

    滴りに惹かれ山路を遅れけり
    (・の音に・・・・・・もし)

    大久保佐貴玖

  • 【104】

    釣忍短冊替へて吊るしけり

    小西俊主

  • 【109】

    天守負ふ如くになんじやもんじやかな
    (・背負うが如く・・・・・・・・・)

    壁谷幸昌

  • 【111】

    菖蒲祭巫女の髪にも菖蒲結ふ

    西岡たか代


純一郎吟

  • 【53】

    新緑の中に浮かぶや名古屋城

  • 【55】

    新樹光清正石は真つ平ら

  • 【117】

    目借り時吾は非常勤監査役