2026年9月16日~2026年10月15日締切分

森田 純一郎選(新ウェブ句会より)

特選 三句

  • 9

    もう高く舞ふことはせず秋の蝶 

    木村由希子

  • 66

    秋耕の谷地田の早も陰りけり

    西岡たか代

  • 103

    秋の蝶ルルドのマリア離れざる

    森田教子

秀逸 五句

  • 45

    烏瓜灯りて嵯峨野昏れんとす 

    前田野生子

  • 53

    複雑な路線図ながめ秋思かな

    田島かよ

  • 55

    芋水車湖北の夕日粉々に 

    古谷多賀子

  • 82

    運動会手を振りに行く車椅子

    月森こはぎ

  • 113

    畳薦平群の里は豊の秋

    阿部由希子

特選 三句

  • 特選1

    もう高く舞ふことはせず秋の蝶 

    木村由希子

    秋も深まった林の中や秋日の濃く沁みた石の上などで、じっとしている秋の蝶は哀れさを感じさせる。その秋蝶を見て「もう高く舞うことはない」と詠んでいる。断定表現ではあるが、淡々と客観的に事実を述べていることが逆に読者の心に悲しく響く。写生句の不思議な魅力を感じる

  • 特選2

    秋耕の谷地田の早も陰りけり

    西岡たか代

    秋耕は、秋の取り入れが済んでから田畑を耕すことをいう。稲刈りの終わった田を迅速にトラクターや耕耘機で鋤く。土の風化を促し、藁が土に混じり早く腐って肥料になりやすいそうだ。谷地田とは谷地にある水気の多い湿田のことだ。作者の住む山添村の秋の夕暮れは特に早いのであろう

  • 特選3

    秋の蝶ルルドのマリア離れざる

    森田教子

    1858年2月11日に聖母マリアが出現して奇跡を起こしたというフランス郊外のルルドの泉を模して日本各地の教会にもルルドが造られている。弱々しい秋の蝶がルルドのマリア様に縋っていたのだろう。事実としてはその通りなのだが、秋蝶という季語を通して儚さを感じた気持ちが伝わって来る

秀逸 五句

  • 秀逸1
    【45】

    烏瓜灯りて嵯峨野昏れんとす 

    前田野生子

    秋になり、京都嵯峨野の昏れゆく林の中で、木々や藪にからんだ蔓に烏瓜の実が生り、赤く熟したこと を灯りてと詠んでいる

  • 秀逸2
    【53】

    複雑な路線図ながめ秋思かな

    田島かよ

    東京や大阪などの大都会の地下鉄やJR、私鉄の入り組んだ複雑な路線図を眺めながら、何となく寂しい思いに耽っていたのだろう

  • 秀逸3
    【55】

    芋水車湖北の夕日粉々に 

    古谷多賀子

    掘った里芋を芋水車に入れて流れる水で洗う。小流れに掛けた芋水車が回り、湖北の澄んだ水に映る夕日が粉々になっているのだ

  • 秀逸4
    【82】

    運動会手を振りに行く車椅子

    月森こはぎ

    現代の運動会の光景である。高齢化社会になって、孫、ひ孫の運動会に車椅子で出かけたのだ。スタートで並んでいる所まで手を振りに行っている

  • 秀逸5
    【113】

    畳薦平群の里は豊の秋

    阿部由希子

    畳薦とは、古語で畳状の筵を指し、「隔て」または「平群」など「へ」にかかる枕詞である。法隆寺の夢殿を作った道詮忌の平群の稲は黄金色に稔っていた

入選

入 選 句

  • 【21】

    伸びやかに世界地図描く秋の雲

    西本陽子

  • 【23】

    鳴る絵馬はハート型なり小鳥来る

    糸賀千代

  • 【34】

    水琴を聴きに来しかや秋の蝶

    武田順子

  • 【39】

    ぬた場へと入りゆく牡鹿すまし顔

    宮原昭子

  • 【48】

    奥琵琶のさらに奥かな初紅葉 

    西岡たか代

  • 【49】

    伊良湖白拾ふまた鷹見送りて 

    古谷彰宏

  • 【54】

    新米や使ひ込まれし夫婦箸  

    月森こはぎ

  • 【59】

    源流は谷川岳や芋水車

    吉浦 増

  • 【64】

    手つなぎて歩きたくなる良夜かな

    大久保佐貴玖

  • 【73】

    石畳窪みの水の澄みにけり

    荻野隆子

  • 【74】

    ぽつねんと能登の海向く案山子かな

    齋藤利明

  • 【76】

    風が窓叩けばつのる夜寒かな

    清水洋子

  • 【78】

    どやどやと男ら着座薬喰

    小林恕水

  • 【90】

    こほろぎのふつと息継ぎして鳴けり

    西本陽子

  • 【102】

    見学の獄の独房秋のこゑ

    糸賀千代

  • 【105】

    星草にペテルギウスの赤を見ず

    木村由希子

  • 【108】

    碧天の白樺峠鷹柱

    古谷彰宏

入選

佳 作 句

  • 【6】

    真白な聖母像へと草の絮 

    田島かよ

  • 【14】

    始まりの合図は太鼓村祭り

    近藤八重子

  • 【18】

    手で掬ひ手の平に載せ豆腐切る
    (・・い・・・・・・・・)

    角山隆英

  • 【26】

    大蛇の尾舞台に余る里神楽

    武田順子

  • 【29】

    水引細工めくカール曼珠沙華 

    山崎圭子

  • 【42】

    ミステリーいよよ佳境の夜長かな

    中内ひろこ

  • 【51】

    秋出水引く間なくまた秋出水

    たなかしらほ

  • 【57】

    空の青雲の白揺れ水の秋

    村手圭子

  • 【71】

    哲学の道に蓑虫ぶら下がる

    小林恕水

  • 【85】

    木地師住む門川早し芋水車

    古谷彰宏

  • 【91】

    舞ひをさめ闇へと消ゆる月の巫女

    村手圭子

  • 【111】

    古文書の下張りの透け庵の秋

    平田冬か


純一郎吟

  • 【58】

    秋冷の聖堂にゐて無我無心

  • 【77】

    さやけしや神官若し宮若し

  • 【95】

    鯨なす堂に聖水ひややかに