2017年6月1日~2017年6月30日締切分

特選1
不夜城のやうなカジノや明易し  小林久美子

アメリカに駐在している頃にラスベガスに旅行し、カジノにも行ったがこの句の通り不夜城という表現がぴったりだった。カジノを出るとすでに空が白んでいたのだろう。

特選2
思はざる高みを飛べる梅雨の蝶  広田祝世

通常、梅雨の蝶は暗く重苦しい雨空を飛ぶものであろう。それがこの句では予想外の高みを飛んでいるというのだ。写生してこそ得られる発見であろう。

特選3
黴の字のいかにも黴びてゐるやうな  平田冬か

たしかに黴という漢字は画数が多く、いかにも風通しが悪そうで黴びていそうだ。写生句ではないが、共感出来る句である。こういった冒険句も良いと思う。

入選1
新築と思へぬ色の浮巣かな  木村由希子

作者は新しく出来た浮巣を見て詠んだのだろう。古い枝や藻などを使って作る浮巣はどう見ても中古にしか見えないのである。

入選2
起上り小法師めきてヨット立つ  小林恕水

ヨットは倒れてもまたすぐに体勢を立て直して元のように立つのであるが、それを起上り小法師とは、うまく形容したものだと感心する。

入選3
結論は急かずともよし生ビール  竹内万希子

「取り合えず生一丁」という言葉もあるが、まずは喉を潤してから本論の話へ入ってゆくのだろう。冷酒や熱燗では感じが出ない。

入選4
一つづつ光取り込み滴れり  西尾青雨

懸崖や深林の巨岩などから滴々と落ちる清涼な滴りの本意を捉えて詠まれている。上五 中七共に表現が非常に瑞々しい。

入選5
蟻追うてこの児守一写しとも  稲垣美知子

日本のフォービズムの画家で「蟻」で有名な熊谷守一写しではないかと作者が思うほど に作者の曾孫?は熱心に蟻を観察していたのだろう。

次に次点句を列記します。添削したものもあります。

【001】イルカショー水しぶき浴ぶ園薄暑   塚本敏代

【002】うからへと配る算段巴旦杏   近藤八重子

【005】シテの面灯して過る蛍かな   小林恕水

【021】海亀の産卵ここと標立つ   平松文子

【025】橋立の松を縫ひゆく白日傘   黒岩恵津子

【027】泡卵森青蛙見つけたり   西本陽子(添削句)

【028】更衣少女等羽化をせしごとく   中島幸子(添削句)

【030】山城を見上ぐる茶屋や心太   篠原かつら

【037】若葉風読みかけの本めくりけり   中野勝彦

【039】舟に住み特等席や揚花火   中島正幸

【041】情熱と狂気のゴッホ夏薊   瀧野ひろし

【043】食堂の跡と伝ふる夏木立   玉田ユリ子

【049】大妻籠旅籠三軒蕨干す   古谷彰宏

【050】知床の五湖にあらねど水芭蕉   迫田斗未子

【059】白々と夏の月ある坊泊り   角山隆英

【061】尾瀬はるかどこまでも咲く黄菅かな   足立 恵(添削句)

【064】物言ひも流石貫禄一の海女   田島竹四

【079】ガラス器にしばし載りたるさくらんぼ   栗林通子

【080】くぐりたる茅の輪のにほふ雨上がり   小田ゆき子

【082】スナックと言ふ小暗さに百合匂ふ   たなかしらほ

【084】たてがみに櫛を入れもし馬洗ふ   野村親信

【088】鮎の串炙るが昼餉簗を守る   内田あさ子(添削句)

【090】奥宮の天突く杉やほととぎす   安藤悠木

【093】花合歓やダム湖の底に眠る村   太田一穂

【102】古座川の一枚岩に桐の花   前田秀峰

【108】傘たたみ雨の茅の輪をくぐりけり   本多亢子

【112】守宮の子一瞬止まり睨み合ふ   迫山悦子(添削句)

【121】水切りの石のごとしや水馬   鳥居範子

【130】土間涼しこの家重要文化財   岡本あざみ

【132】堂一歩出づれば眩し山若葉   中内ひろ子

【133】独活採りに寄り道しては成果なし   佐々木紫水

【143】面を脱ぎ汗の噴き出すインタビュー   田島もり

【147】棕櫚の葉を屋根に葺きたる海の家   平松文子

【149】柏餅余白ばかりの皿二枚   日根美恵

【153】なにもなき古城址一基蟻の塔   壁谷幸昌

【155】ビデオほどイルカは跳ねず船遊   阪野雅晴

【161】羽根を乾す鵜に見られゐて川下り   長谷阪節子

【163】奥院へ行く道々のつるでまり   糸賀千代

【171】眼裏に深紅を残しバラは散る   新實和夫

【177】桂馬跳びはた飛車滑り水馬   中島 葵

【178】湖の辺へ続く林道九輪草   垣内孝雄

【181】今はもう猫のものなる籐寝椅子   小林久美子

【185】三つ鳥居模する茅の輪を潜りけり   馬越 久

【213】百選の棚田は梅雨を待つばかり   津田つる子

【218】遥けきを見てをられたる峠の忌   村手圭子

皆さん、また今月末を目標に新しい句を投句して来て下さい。純一郎