2017年8月1日~2017年8月31日締切分

特選1
逸り鵜に手縄張り詰め通しかな  木村由希子

先月と続けて鵜飼の句が巻頭となったが、やはり吟旅で得られた写生句には勢いがある。 闇の中、篝火を焚いて鵜匠は船頭、中乗りと共に鵜を操って鮎を捕まえさせるのだが、 近くで見ると想像以上に困難で危険な作業である。掲句からその緊張感が伝わって来る。

特選2
わが一歩百の船虫走らする  平田冬か

夏の季語である船虫は通常岩礁や舟揚げ場などに棲み、長い触覚を動かして 、黒褐色で草鞋のような体を俊敏に動かし群れで行動する。虫嫌いな人には不愉快極まりない生き物である。 この句は、船虫の特徴を一と百という数字によってうまく表現している。

特選3
帰省子の口籠ること母わかる  迫田斗未子

学生や会社員が長期休みを利用して里帰りすることを俳句では帰省という夏の季語としており、 帰省子はその人を意味している。恋人、転職、お金、何について口籠っているのだろうか。 峠にも「帰省子の電話の相手母は知る」という私を詠んだ句がある。

入選1
開かずの扉全開されて松手入  田島もり

松手入は、秋の季語で新葉が伸び、古葉を切り取る作業をいう。 掲句は不思議な句だが、滅多に開かない扉を開いてまで行う貴重な松の手入れ作業なのだと想像した。

入選2
熊野灘宝庫と群るる鰹船  黒岩恵津子

那智勝浦吟旅の句。季語は無論、鰹船で夏である。黒潮に乗って北上する鰹を勝浦では沿岸で捕まえる。 白い鰹船が群れる熊野灘の光景は宝庫という言葉がぴったりである。

入選3
登高や黒潮の帯見ゆるまで  清水洋子

登高の元の意味は、重陽の日(9/9)に高い所に登って菊酒を飲み交し、災厄を払うこと だが、今は秋晴の日に高い所から下界を見渡すこととして詠む。「黒潮の帯」が良い。

入選4
夏期講座懐中電灯星に向け  古谷彰宏

夏期講座も俳人の好む夏の季語である。シニア向け講座も最近は増えているらしい。懐 中電灯を何光年も先の星に向けても無意味と知りつつ夢を追う作者の気持ちが伝わる。

入選5
大文字始まる闇を待ちにけり  小林久美子

解釈の難しい句である。作者は、大文字を待ち、それが始まる夜の闇を待っているので ある。つまりこの句の作られた時は、まだ明るいのである。こうした想像も楽しい。

次に次点句を列記します。添削したものもあります。

【001】かく跳ぬる筋肉何処に水馬     朝雄紅青子

【005】のぼりゆく木曽路たちまち霧の海  西本陽子

【020】芋虫はやはり芋虫擬態せど     玉田ユリ子

(原句=擬態しても芋虫は芋虫なり)

【026】硯洗や重きともはた軽きとも    村手圭子

【029】見納めの熊野古道に秋惜しむ    田島竹四

【045】新涼や仕舞ひ忘れし旅カバン    吉田ひろこ

(仕舞い→仕舞ひ)

【050】青畝の句口衝いて出る残暑かな   たなかしらほ

(青畝句=朝夕がどかとよろしき残暑かな)

【052】川舟の行く手に増ゆる赤蜻蛉    太田明

【061】土手下の鵜塚に早も昼の虫     篠原かつら

【064】二の腕まで撥にし踊り太鼓打つ   塚本敏代

(上五字余りですが、添削しない方が良いので、このまま採ります)

【066】浜小屋に盆提灯を吊しけり     前川勝

【077】縷々と延び縷々と咲きつぐ縷紅草  壁谷幸昌

【086】フィナーレは炭坑節よ盆踊     塚本敏代

【105】原色の急に減る画布秋はじめ    野村親信

(どっとは増える時に使うべきだと思います)

【106】湖わたる風に吹かれてハンモック  鳥居範子

【107】胡弓弾く腰の辺が艶風の盆     村手圭子

【108】五寸切を出されて憩ふ船座敷    前田秀峰

(五寸切=ごんぎり=小さい鱧を素乾にしてもの。刻んで膾にする)

【114】思ひ出と共に仕舞ひし夏帽子    小田ゆき子

(思い出→思ひ出)

【121】初潮や橋杭岩に海ふくれ      長谷阪節子

【128】盛塩をして客を待つ夏のれん    中島幸子

【132】存分にアルプス臨むサングラス   竹内万希子

【134】探し物そのまま土用干しとなる   中島 葵

【137】登り窯休ませてあり昼の虫     本多亢子

【141】濡縁にビニールプール干されけり  吉川やよい

(原句下五=昼下がり)

【157】ゴンドラに見下ろす白は瀑布なる  広田祝世

【161】磯遊橋杭岩の外へは出ず      黒岩恵津子

【170】愚痴二つ厨に漏らす残暑かな    山崎ぐずみ

【172】戸を繰りて風の優しき今朝の秋   角山隆英

【182】終電車弱冷房の心地良し      井野裕美

【184】重力の無きかに浮ける水すまし   平松文子

【187】小鳥来る天の岩戸の小流れに    小林恕水

【189】城壁に国旗の高し天高し      阪野雅晴

【206】読み終へし本を重ねて避暑地去る  木寅美幸

(読み終えし→読み終へし)

【207】馬頭尊おはす辺ことに露涼し    村手圭子

【218】妙見の麓に住みて風は秋      津田つる子

【219】無人駅ホームを洗ふ白雨かな    長谷阪節子

【223】踊下駄揃へ一家の帰り待つ    平田冬か

【226】涼しさや浮島の森二タ巡り    田島もり

【227】涼新た素足にさらの下駄馴染む  玉置泰作

(原句=涼新た素足にて履くさらの下駄)

【228】冷やされて喉もと滑る心太    新實和雄

皆さん、また今月末を目標に新しい句を投句して来て下さい。純一郎