2017年5月1日~2017年5月31日締切分

特選1
一戸減り二戸減る里の蛍増ゆ  糸賀千代

人家が減ることに反比例して蛍が増えるという事実の面白さを捉えると共に、 「里の」という言葉によって過疎地の寂しさが出ている。数字をうまく使った句でもある。

特選2
春愁やLINEに既読いまだ出ず  たなかしらほ

LINEをご存じない年配の方には説明が必要だが、既読マークが出ないと無視されているように感じる。 少し添削したが、現代の春愁の句として非常に共感した。

特選3
揚雲雀視野狭窄の中に消ゆ   古谷彰宏

この句も緑内障や黄斑変性症といった現代人の目の疾患を詠んだ句である。 揚雲雀の句として新しいと思った。ネット句会ではこうした新しい句に目を向けたいと思っている。

入選1
烏賊釣火遠流の島を囲みたる   小林恕水

上述したことに反するかも知れないが、やはりこうした詩情に溢れた写生句は魅力がある。 烏賊釣火と遠流の島という言葉に惹かれた。

入選2
急湍は櫓を棹に変へ舟遊     清水洋子

俳句とは瞬間を切り取るものだとも言われるが、この句においては一言の無駄もなく詠まれ、 急流下りの迫力が伝わって来る。

入選3
千枚の植田に能登の夕日あり   池嶋大貴

俳句では固有名詞をむやみに使うべきではないと言われることが多い。しかし、この句 で能登という地名がなければ魅力が半減するだろう。

入選4
一在所十戸とあらずほととぎす   村手圭子

この句も数字をうまく使っているが、この句の良さは取合せではあるが、離れすぎてい ない「ほととぎす」という季語の斡旋であろう。

入選5
綿虫やふと現れてふと消ゆる   小林久美子

「ふと」の繰り返しがこの句の生命線である。もし、苦吟して出来た句でないとすれば、 この作者の中に俳句のリズム感が染み込んでいる証であろう。

次に次点句を列記します。添削したものもあります。

【10】鞍外しどれが勝馬負馬か   広田祝世

【18】花桐や蔦に絡まる登り窯   山下えつこ

【31】手波にも戻り来るなり流し雛   田島竹四

【39】水芭蕉夕闇せまりなほ白く   塚本敏代

【59】日本一長寿の村や蕎麦の花   小林久美子

【66】名札無きこと惜しまるる薔薇の園   鳥居範子(添削句)

【68】面ゆがむままなる菩薩練供養   清水寿恵子

【71】葉はいまだ片白ならず半夏生   稲垣美知子

【72】葉を傘に浦島草は糸垂るる   田島もり

【79】かつぽれの連賑やかな祭かな   野村親信

【97】猿蓑を知りたく訪へば青時雨   迫田斗未子

【107】駆けてゆく犬の名を呼ぶ夏帽子   太田一穂

【118】縮み行く吾の背丈や更衣   迫山悦子

【121】水入るる田を喜びて鳴く蛙   前川 勝

【122】雀の子生飯台までは未だ飛べず   玉田ユリ子

【132】潮の香の露天湯掠む夏燕  龍野ひろし

【140】弁天社守るかに蝦蟇の動かざる   長谷阪節子

【161】モネの絵を摸したる池や乗込める   黒岩恵津子

【166】一山を白い手裏剣山法師  竹本正竜

【167】浦島草糸の先には何もなし   山本ヒロ子

【172】河骨は溝の流れに花ともす   前田秀峰

【180】札幌のビルの谷間にリラの月   古谷多賀子(添削句)

【184】思ひ出を閉ぢては開くる更衣   竹本寂香(添削句)

【186】拾はずにをく山祇の落し文   篠原かつら

【191】真直ぐとは行かず神事の田を植うる   阪野雅晴

【198】赤き嘴鷭の子供とすぐわかる   中島 葵

【205】程の良き枝の高さや袋掛   馬越 久

【219】落柿舎になく祇王寺の若楓   迫田斗未子

【223】薔薇に囲まれ異国めく一館   岡本あざみ

【224】薔薇の風ほしいままなるカフェテラス   竹内万希子

【226】襤褸市に売り切れしたる店を見ず   木村由希子

皆さん、また今月末を目標に新しい句を投句して来て下さい。純一郎