2017年12月1日~2017年12月31日締切分

特選1
冬籠「生きているか」とメール来る  阪野雅晴

現代の冬籠の句だと思います。この句の作者は、まだ若いので、友人から少しユーモアを交えてのメールが来たものと解釈しますが、これを高齢の一人暮らしの人の場合を想像すると本当に深刻な社会問題としてとらえる必要があると思います。 さて、一俳句作品として鑑賞するとこの句は非常に季語の良く効いた句だと言えます。また、冬籠という季語は動かないと思います。

特選2
寒夕焼この山並のありてこそ  村手圭子

寒い日の夕焼けは短く淡いですが、それだけに非常に印象に残るものでもあります。奈良に住む作者の山並とは、耳成山、香具山、畝傍山の大和三山、二上山そして三輪山のことでしょうか。寒い日にそれらの山並を朱く染める夕焼を眺めて作者は自分の住む地をしみじみと思ったのでしょう。「この山並のありてこそ」という率直な表現が読者の心を打ちます。

特選3
あれよあれよと言ふ間なく年送る  小林久美子

青畝師に「間髪を入れずして年改まる」という新年の句がありますが、掲句は「年送る」なので冬の句です。家庭の主婦として慌ただしい中にあって、一年を振り返るような余裕もないままに歳晩の日々が過ぎて行ったのでしょう。七五五の破調句ですが、「年送るあれよあれよと言ふ間なく」と定型にしてしまうと平凡になり、面白さがなくなってしまいます。

入選1
大鳥居仰ぐ聖地の初御空  太田 明

和歌山に住む作者にとっての大鳥居を仰ぐ聖地と言えば、熊野本宮大社の大斎原のことでしょう。熊野那智の人々が愛し敬う神さぶる地です。

入選2
幾度も天地を返し楮晒す  木村由希子

高級な和紙を作るために、凍てつくような水の中から真っ白の白皮となった楮を裏表を逆にしながら、すくい上げる作業を続けるのでしょう。

入選3
繞道や白装束 のお松明  田島竹四

大神神社で元旦の午前零時に始まる繞道祭では、神山深く鑚り出されたご神火を三本の大松明に移し、白装束の氏子衆が摂社末を巡るのです。

入選4
編んで解き編んで解きして毛糸編む  西尾青雨

この句の通り、正月に帰省した長女が恋人のために毛糸を編んでは解き編んでは解きし ていました。うまくいかない様が繰り返し表現によって伝わります。

入選5
獣みな鎮まりゐたり山眠る  西本陽子

兵庫県に住む作者の地域には猪や熊などが棲んでいるのでしょうか?少し恐ろしいよ うな句ですが、山眠るの季語の使い方として珍しいです。

次に次点句を列記します。添削したものもあります。

【005】餅搗のだんだんと息合ひにけり  栗林通子

(---たるよ)

【026】長き夜の二人の会話かみ合はず  後藤允孝

(---合わぬ)

【027】丁寧にリモコン拭くも年用意   中島 葵

【028】注連かけていよよ神さぶ那智の滝 小林久美子

【034】聖菓買ふ二人に見合ふ大きさの  たなかしらほ

【036】新年号表紙に心癒さるる     田島もり

【047】除夜の鐘異国の吾子に思ひ馳せ  竹内万希子

【049】見回りのあるとは見えず猪の罠  古谷彰宏

【057】火伏神煤け鍛冶屋の年詰まる   篠原かつら

【059】頻波に身を委ねたる浮寝鳥    山下みつぐ

【060】餌台の下に集へり寒雀      佐々木紫水

(---も-う--)

【061】一箸に花弁欠けし牡丹鍋     広田祝世

【063】レストラン出づるやコート襟立つる 宮原健熊

(--れば---の?てり)

【076】炉話に聞く糸繰りの頃のこと   篠原かつら

【085】負けん気は今も変らず木の葉髪  岡本あざみ

【087】表札を磨き上ぐるも年用意    小林久美子

【107】数へ日も辻堂の供華怠らず    広田祝世

【112】日向ぼこ相撲談義となりにけり  足立 恵

【114】寺社多き京にミサありクリスマス 長谷阪節子

【137】ぬた場あり獣道あり猪の罠    古谷彰宏

【144】燗熱し歯に衣着せぬ者同士    平田冬か

【156】緋袴に懐炉差し込み福娘     巻木痺麻人

【158】煤逃げのついでに有馬記念買ふ  野村親信

【165】冬ソナの小径と名づけ枯木立   吉川やよい

【166】電ノコも手鉤も道具鮪割く    中島 葵

【167】天の塵地の塵祓ひ弓始      小林恕水

【168】長屋門表札替り万両忌      角山隆英

【178】神に感謝夫に感謝と日記果つ   古谷多賀子

【181】書く名前今年も減らず祝箸    黒岩恵津子

【194】古着市化けて出さうな毛皮吊る  木村由希子

【196】権現の舞に果つるや岳神楽    斎藤利明

【208】ちょと爪を立てて柚子嗅ぐ冬至風呂 糸賀千代

【212】グレゴリオかそけしロビー聖夜待つ 迫田斗未子

皆さん、また今月末を目標に新しい句を投句して来て下さい。純一郎