2017年10月1日~2017年10月31日締切分

特選1
飛蚊症いまは気にせず鷹を待つ  中島 葵

原句は「飛蚊症いま特に邪魔鷹を待つ」でしたが、少し分かりづらいことと、 飛蚊症など気にもせず鷹を待つのだという句にしたかったので添削しました。 目を酷使する現代人の詠む鷹の句として新しいと思いました。

特選2
大手門潜りてよりの菊花展  古谷彰宏

作者は、城の正面である立派な大手門を潜って豪華絢爛な菊花展を見に行ったのでしょう。 非常にオーソドックスな詠み方をした写生句ですが、スケールが大きい正統的な菊花展の句 としていただきました。

特選3
文化の日句屑の増えてゆくばかり  阪野雅晴

句屑が増えるということは、作者が多作多捨、つまり数多く作句し、かつ数多く句を捨てることによって 句を絞り込む作業をしていることだと思います。俳句実作という文化創造活動に対する季語に文化の日 を持って来たことが良かったです。

入選1
訳しらず幼子仮装ハロウィン  井野裕美

ハロウィンで魔女の恰好をさせられている幼い子供は大人たちのはしゃぎっぷりを 他所にポカンとしているのです。現代の風俗を詠んだ句です。

入選2
乾坤の静寂を破る鶴の声  小林恕水

乾坤(けんこん)つまり天地の全ての静けさを破って鶴が鋭い鶴唳を発したのでしょう。 やや硬い熟語を用いて格調高い句としています。

入選3
検査寒CT・エコー・レントゲン  田島竹四

検査寒という新しい言葉に驚かされますが、CT・エコー・レントゲンと今の人間ドッ クの検査項目を畳みかけて詠み込んでいて面白い句です。

入選4
大根焚湯気も一緒に掬ひ分け  後藤允孝

12月の寒さの中、京都鳴滝の了徳寺で行われる大根焚の行事では、大根と一緒に大きく 上る白い湯気も掬い分けているというのです。

入選5
林泉に葉を落とさぬやうに松手入  村手圭子

林泉(しま)とは林や泉水などのある庭園のことですが、この句の場合は、その池泉を 意味すると考えて良いでしょう。松手入する職人の心遣いが伝わります。

次に次点句を列記します。添削したものもあります。

【019】菊枕不出来なれども香の高し   糸賀千代

【028】書割は雪の吉良邸菊人形   平田冬か

【034】推敲の一語に迷ふ夜長かな    迫山悦子

【036】返り花マンハッタンは石と鉄   野村親信

           
(石と鉄―の返り花)

【048】町名に明治の名残一葉忌     篠原かつら

【051】沈下橋一の字に映え水澄めり   清水洋子

                  
(―映ゆ)

【058】舗装路に湯煙りあげて大夕立   塚本敏代

【076】ヴァチカンの広き天空鳥渡る   小林久美子

【078】陰と陽性は違へどおでん酒    糸賀千代

        
(おでん酒気合ふも性は陰と陽)

【087】黄落の中胸張って御堂筋     角山隆英

【093】騎乗して走ってみたき花野かな  平田冬か

【097】吾は一階夫は二階の月仰ぐ    清水寿恵子

【099】秋日濃し供華の絶えざる異人墓地 栗林通子

【103】蛇崩れのまだ動きさう山眠る   村手圭子

【105】口切や茶菓のもてなし和三盆   近藤八重子

【124】提灯の揺れだんじりの近づき来  阪野雅晴

【140】落柿舎の道汚したる熟柿かな   前田秀峰

【144】杣小屋の乏しらの灯に狸汁    竹内万希子

【146】靄晴れて鷺たつのみや崩れ簗   長谷阪節子

【147】ガラス戸に秋の日歪む志賀旧居  馬越 久

【149】モンローの口のさまして通草熟る 清水洋子

【164】苦吟せる我が頂門を打て木の実  木村由希子

【175】四間のみの国男生家に冬日満つ  広田祝世

【180】小説より奇なる日記や一葉忌   野村親信

【182】食べよとて大口開くる通草かな  篠原かつら

【185】瀬枕のまこと高々崩れ簗     古谷彰宏

【196】長き夜や聞き役となる長ばなし  児島芙美

【199】秋高し旅の計画立てやうか    吉川やよい

               
(―ようか)

【217】練習の亥の子太鼓の響き初む   糸賀千代

皆さん、また今月末を目標に新しい句を投句して来て下さい。純一郎