2018年1月1日~2018年1月31日締切分

特選1
雪掻いてあるが入口雪囲  平田冬か

歳時記を読むと、雪囲という季語は北国で家の回りに丸太を立てて葭簀や筵などを垂らし、 直接吹雪の害を避けようとするためのものとあります。 常識的に考えると雪囲イコールその構築物ということになりますが、 実際に現地でそれを目にした時に作者が感じたのは、 どこが家への入り口なのだろうという素朴な疑問だったのでしょう。 そして、それが雪を掻いてある所なのだと知って句にしたのです。 作者の純粋な気持ちを写生という手段を使って生き生きと表現した句です。

特選2
蹲踞の水のかげろふ白障子  中島 葵

蹲踞とは茶庭の低い位置に据えてあって茶客が手を洗うのに使う石の手水鉢のことです。 その水が茶室の白障子に映ってゆらゆらと揺れているのです。 作者は、蹲踞の水をほのかに映す白障子を通して入る光を心静かに見ていたのでしょう。 一見あっさりと詠まれているようですが、奥深い余情を感じさせる句です。

特選3
ぶつかつてぶつかつて勝独楽となる  小田ゆき子

日本各地に独楽を使った様々な遊びがあるようですが、 この句ではおそらく山形県米沢の相撲独楽のことを詠んでいるのではないかと想像します。 独楽用の土俵の上に二つの相撲独楽を回してぶつからせて相手の独楽を土俵から突き落とすゲームです。 この句は、「ぶつかつて」を繰り返し、「勝独楽となる」と言い切った技法が見事です。

入選1
尖りゐて風に抗ふ冬木の芽  坂本ミヨ子

冬木の芽をただ詠むのではなく、「尖りゐて風に抗ふ」と形容したことによって、非常に文学的な句となりました。

入選2
鷽替ふる視線を合はせ合はせずに  糸賀千代

神社の境内で大勢の人が鷽を交換し合う鷽替神事では相手の人に目を合わせることが照れ臭いこともあるでしょう。

入選3
我が町に甲山あり恵方とす  林つぼみ

私の家からも少し歩くと見える甲山は阪神間に住む人にとって愛着のある山です。 まさにこの句の通り、正月には甲山を恵方とする気持ちになります。

入選4
新しきルージュ試しぬ初鏡  内田あさ子

新年になって初めて鏡に向かってお化粧をする時に新しい口紅を使ってみたくなった という女性らしい細やかな心理を詠んだ句です。

入選5
鉈音の聞こえ聞こえず成木責  壁谷幸昌

二人一組で果樹の根元や樹皮に少し傷をつけて「なれ、なれ」と責め、そのあと木に代 わって「なります、なります」と答え、豊作を約束する小正月の行事を成木責と言いま す。余り見られない行事ですが、その様子を伝える一句です。

次に次点句を列記します。添削したものもあります。

【005】その中に恩師の一句初暦  平松文子(ぶんこ)

【007】それなりの老いを写せし初鏡  西尾晴雨

【009】どんど火を転び落ちたる達磨かな  壁谷幸昌

【019】海市見し証拠見せよと言はれても  小林恕水

【028】言はぬことあるも孝行春を待つ  吉川やよい

【040】女正月少し濃く紅さしにけり  中内ひろこ

(---濃い---ていざ)

【041】熱燗や男もすなる愚痴話  内田あさ子

【047】千の凧揚がる大空見て飽かず  鳥居範子

【064】白障子開くれば花の絵天井  山本ヒロ子

【070】憂ひある我に向かひて山笑ふ  玉田ユリ子

(---う)

【074】レンジにて事足る調理三日かな  小林久美子

【097】湖東より眺むる湖北雪模様  たなかしらほ

【099】国訛出して尋ぬる大根焚  新實和雄

(---尋ねる---)

【100】酷寒の余呉にまさかの釣師かな  黒岩恵津子

【107】尚更に眠れぬ夜の猫の恋  太田 明

【115】聖夜の灯消されてミサの始まりぬ  木村由希子

【122】大隈像仰ぎこれより大試験  古谷多賀子

【126】着ぶくれて躓くことの多くなり  中島正幸

【127】通じたる片言英語あたたかし  清水洋子

【131】峠句碑あるが由ゑなる初詣  広田祝世

【132】難渋の税務申告冬籠  古谷彰宏

【161】医療費のレシート束ね春を待つ  竹本正竜

【170】友に問ふ故郷は今宵も雪か  新實和雄

(故郷は今宵も雪かと友に問う)

【173】傘寿なほ矍鑠として寒稽古  後藤允孝

【177】芝居はね役者見送る寒の月  前川 勝

【191】泉源へ踏まねば行けず坂の雪  迫田斗未子

【198】白魚火の揺るるは網を叩くらし  田島竹四

【204】豆を撒く人神になり鬼になり  田島もり

【210】風伯と戯るるかに凧機嫌  木村由希子

【214】綿菓子のやうな雲過ぐ枯木立  村手圭子

※互選で高得点で主宰選に入っていない句は、過去に類句類想があったり、平凡であったりした句だと思って下さい   純一郎