2017年9月1日~2017年9月30日締切分

特選1
月天心舟は湖心に櫂休め  内田あさ子

阿波野青畝の名句「舵の音絶えて西湖は月に侍す」を思い出しました。 天の真ん中に月が上がる頃、大きな湖の真ん中に漕ぎ出た小舟は櫂をあげてしばらく静止していたのでしょう 。韻を踏む心(しん)の一語が句を引き締めています。

特選2
膝を抱く檻のゴリラを見て秋思  平田冬か

動物園の檻の中で、無聊な様子で膝を抱えてじっとしているゴリラの様子を見ていて、 作者は自分自身に秋の愁いの思いが募って来たのでしょうか。 ゴリラという大きく恐ろしそうな動物だからこそ却ってそのように感じたのかも知れません。

特選3
おっとっと表面張力新酒酌む  近藤八重子

上五の「おっとっと」という表現の面白さと共に「表面張力」という堅い科学用語の組み合わせが 読者の目を惹きつける句です。また、この句のお酒は出来立ての瑞々しさが感じられる新酒でなければ感じが出ません。

入選1
百足来て吾の二足のもつれさう  吉川やよい

百と二の数字の対比と共に、突然現れた百足虫に恐れをなして自分自身の脚がもつれてしまいそうだという発想が面白い句です。

入選2
妻籠より馬籠の峠つるでまり  篠原かつら

妻籠宿から馬籠峠へのゆるやかな坂道沿いには白く可愛らしいつるでまりの花が咲いて行く人の目を楽しませるのでしょう。

入選3
光るもの浜に散らばる良夜かな  小林恕水

砂浜に散らばる貝殻が仲秋の名月に照らされてキラッと光る景色は美しく、また何かしら物悲しい感じがします。 「光るもの」という詠み方が巧いです。

入選4
偕老の互ひを頼む冬籠  糸賀千代

老夫婦二人で家に籠って長い冬を過ごす時に、お互いをいたわり合いながらも頼りにし 合っている様子が伝わって来ます。

入選5
篝火の吹つ飛びさうに鵜舟来る  古谷多賀子

長良川の鵜飼の様子だと思います。この句の「吹っ飛びさうに」という表現によって鵜 飼のスピード感や迫力が伝わって来ます。

次に次点句を列記します。添削したものもあります。

【003】ひたひたと締め切り迫る九月尽  竹本正竜

【004】ひらがなの八一の歌碑に秋深し  前田秀峰

【007】一歩より萩かき分けて萩の寺   小田ゆき子

【017】間引菜の屑葉流れに乗りにけり  山下りゅう太

【020】胸までの芒の原に溺れさう    中島 葵

【024】懸命に渡る鷹見て鳶は見ず    広田祝世

【030】山門をくぐれば突如秋の色    冨土原博美

【036】小判草触れ合ふ音の高からず   中島幸子

【041】水の秋水車は何も搗いてゐず   篠原かつら

【045】草に身を委ね南蛮ぎせるかな   栗林通子

【051】釣宿の煎餅蒲団明易し     田島もり

【052】添水打つ少し遅れて谺打つ   清水洋子

【075】これはまだ色失はず思ひ草   安藤悠木

【077】ふと仰ぐ空の高きを鳥渡る   馬越 久

【086】佳境へとページをめくる夜長かな  太田 明

【093】曲がらずにはた撓はずに曼殊沙華  岡本あざみ

【098】見ればすぐ数へたくなる鶏頭花  壁谷幸昌

【106】残業も良かれと思ふ今日の月   吉田ひろ子

(思う→思ふ)

【122】水底の影の黒きに識る目高   山崎圭子

【140】仏の灯落としてからの鉦叩き   玉置泰作

【143】万葉集よくは知らねど思ひ草   迫田斗未子

【148】「かかさん」と楽屋で泣く子村芝居   野村親信

【153】この道を行けば暗峠(くらがり)葛を踏む  山本ヒロ子

【157】ロボットの案内適切文化の日   黒岩恵津子

【158】わが指に止まってくれず赤とんぼ  小林久美子

(くれぬ→くれず)

【159】一輪車洗ひて終はる溝浚    阪野雅晴

【161】芋虫の丸々として反り返る   山下えつこ

【162】運ばるゝ新藁匂ふ牛舎かな   平松文子

【166】皆曲る今年の糸瓜子規の庭   古谷彰宏

【167】伎芸天拝し春愁なほ去らず   足立 恵

(---ほとり--去りがたし)

【183】コーヒーの香の高き秋来たりけり  中野勝彦

(秋めくと-----かな)

【187】重なれる山より湧きて夏の雲   津田つる子

(重なりし---湧きし)

【188】重なれる島また島を鳥渡る   村手圭子

【204】箱庭は海辺の景や人魚置く   木村由希子

【208】門一歩白萩長き秋篠寺   田島竹四

【209】零さずに摘むは至難の零余子かな  玉田ユリ子

【214】儚さのつのる余生や鰯雲   後藤允孝

皆さん、また今月末を目標に新しい句を投句して来て下さい。純一郎