2017年11月1日~2017年11月30日締切分

特選1
綿虫の舞ひけり吾の溜息に  村手圭子

胸を打つ一句です。「かつらぎ」の副主宰でもある作者のご主人は闘病の甲斐なく、11月18日に逝去されました。71歳という若さでした。 掲句は、自分のついた溜息に綿虫が舞ったと客観的に写生されていますが、私にはご主人の魂が綿虫の姿を借りて作者に寄り添っているようにも感じられました。 また、このような前提がなくとも綿虫の句として非常にレベルの高い句となっています。 「かつらぎインターネット句会」を代表して、心からの哀悼の意を改めて表すると共に、このような悲しみの中でも俳人としての矜持を失わず、きっちりとした句を発表される作者を尊敬します。

特選2
気がつけば男吾のみ大根焚  安藤悠木

大根焚という冬の季語は、12月9日・10日の二日間、京都市鳴滝の了徳寺の庭に大釜を据えて大根を焚いて参詣者にふるまい、親鸞上人の徳を偲ぶ行事のことを言います。 寒さの中、ふと気が付くと焚きあがった大根をいただく列に並んでいるのは、女性ばかりで男性は自分一人だというのです。こうしたことは吟行で私もよく経験します。男性俳人の一人として共感する句です。

特選3
冬晴れやあのひとはもういはれへん  日根美恵

この句も誰か作者の近しい人に対する追悼の一句だと思います。人は、キーンと澄み切った冬晴れの空を見ていると世俗を忘れてしまうような気持ちになります。 掲句では、中七下五に漢字を一切使わず、大阪弁の口語表現という思い切った技法を使っています。句意と表現方法が見事にマッチした句に仕上がっています。 但し、この手法は滅多に使わないことによって生きて来るものでもあります。

入選1
偕老のふたりがかりの布団干し  中内ひろこ

夫婦仲よく共に老いるまで連れ添うことを偕老と言います。筋力の弱くなった老夫婦が助け合って好天の朝に布団を干すという現代生活の光景を詠んだ句です。

入選2
そんなにも買うてどうする年の市  小林恕水

この句も話し言葉による面白さを出しています。 年の市に出掛けると周りの雰囲気に乗せられて想わ ず財布のひもが緩んでしまうのでしょう。

入選3
色鳥の佳信のごとく吾庭に  平田冬か

俳句では、色鳥とは秋に渡って来る小鳥を言う秋の季語です。 鮮やかな色鳥がまるで何 か佳い知らせを届けるように自分の家の庭にやって来たのでしょう。

入選4
聖堂に冬日あつめし色硝子  小田ゆき子

クリスマスの近づく教会の聖堂は段々と厳かな雰囲気になっていきます。 教会のステン ドグラスに冬日が射す様子を色硝子という言葉を使ってうまく詠んでいます。

入選5
凍星や悲しい時は空を見る  玉田ユリ子

中七下五の口語表現があまりにも率直、素直すぎるように思いますが、 作者の心の奥底 に潜む気持ちが表されたものだと思います。凍星の句として新鮮です。

次に次点句を列記します。添削したものもあります。

【012】ひらひらとひら仮名めきて木の葉散る 竹本正竜

(---書くよに---)

【028】玄室にまでは及ばず猪の害    田島もり

【029】古塚をいくつも抱きて山眠る   小林久美子

【032】奥にまだ二月堂あり紅葉狩    佐々木紫水

(紅葉狩奥にまだある二月堂)

【039】水の面をへこませ鴨の潜りけり  平田冬か

【041】石蕗の花術後の友を案じつつ   栗林通子

【044】先客の猫を抱き寄せ日向ぼこ   太田 明

【048】断層を隠し隠さず葛跋扈     朝雄紅青子

【051】張替し障子に座敷広くなり    津田つる子

【057】添削の句に学びもす夜長かな   平松文子

【063】崩すには惜し風呂吹の真円は   広田祝世

【065】立冬や綿入れのかるさんを履く 玉置泰作

(綿入れのかるさんを履く冬立つ日)

【082】きかん気の強さうな声鵙猛る   糸賀千代

【084】こだはりの菊作り説く菊師かな  本多亢子

【095】過疎守るや二つ残せる木守柿   角山隆英

【102】境内のどこ歩きても落葉鳴る   迫田斗未子

【105】今日は今日明日は明日日記買ふ  村手圭子

【136】民謡の一つ飛び出す囲炉裏かな  山本ヒロ子

【144】碑の立つる露地は変はらず織田作忌   黒岩恵津子

【149】魔女お化け吐き出す電車ハロウィン   木村由希子

【158】おでん酒右も左も愚痴らしく   中島 葵

【164】われはまだ祇園を知らず勇の忌  たなかしらほ

【165】意気込みの尻すぼみせる日記果つ 清水洋子

【171】下見ずに吊橋渡る紅葉狩     平松文子

【189】参道の空より落葉降り来たる   西尾青雨

(---降り来落葉かな)

【194】蛇行する雨傘の列大根焚     鳥居範子

【204】鷹柱立て直しては太りけり    山本ヒロ子

【206】適塾の最も寒き主部屋      広田祝世

【222】綿虫の意志ある如く無き如く   篠原かつら

【233】ベネチアの教会灯し聖夜待つ   阪野雅晴

皆さん、また今月末を目標に新しい句を投句して来て下さい。純一郎