
2025年1月16日~2025年2月15日締切分
森田 純一郎選(新ウェブ句会より)
特選 三句
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115
余寒など云ふてはをれず赴任地へ
迫田斗未子
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45
末黒野を歩めば土の弾みけり
清水洋子
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85
食べ頃を逆算しつつおでん煮る
阿部由希子
秀逸 五句
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9
漉く紙の目方大方水のもの
木村由希子
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18
看板は領土返還雪しまく
中島 葵
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49
トンネルを抜けたる心地春日差す
(・・・・・・・・・・・・・し)西本陽子
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52
カラフルな家並みの島に避寒かな
高橋宣子
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100
縫ひ上げし衣を纏ひて針供養
武田順子
特選 三句
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特選1
余寒など云ふてはをれず赴任地へ
迫田斗未子
おそらく、寒冷地への転勤を命じられた人のことを詠んでいるのだろう。余寒は春の季語で、寒が明けて春になったが、まだまだ寒さが残っていることをいうが、全くレベルの違う雪深い北国への赴任辞令が出たのであろう。企業で働くということは生易しいものではない
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特選2
末黒野を歩めば土の弾みけり
清水洋子
野焼きをしたあとに黒々と広がる焼野のことを末黒野といい、俳句の世界では初春の季語としている。南紀新宮に住む作者は、末黒野を歩いた時に足裏に土の躍動を感じたのだろう。「土の弾みけり」という率直な表現により、春の訪れを喜ぶ気持ちが伝わって来る
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特選3
食べ頃を逆算しつつおでん煮る
阿部由希子
おでんはちょうどよく煮えて、出汁が沁み込んだ頃が一番美味しい。しかし、私などは食べるだけであり、それを考えて作る人には本当に頭が下がる思いである。「食べ頃を逆算しつつ」というところに家庭の主婦である作者の夫に対する愛情を感じることが出来る
秀逸 五句
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秀逸1
【9】
漉く紙の目方大方水のもの
木村由希子
紙漉きの時に重量を測りながら漉くのだが、重さはほとんどが水である。難しい内容をうまく詠んでいる
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秀逸2
【18】
看板は領土返還雪しまく
中島 葵
北方領土返還を訴える北の地に住む人々の強い思いを押すように雪がしまいていたのであろう
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秀逸3
【49】
トンネルを抜けたる心地春日差す
(・・・・・・・・・・・・・し)西本陽子
春らしい日差しを浴びた時に、思わずトンネルを抜けた時の開放感を思ったのだろう。実感が伝わる
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秀逸4
【52】
カラフルな家並みの島に避寒かな
高橋宣子
避寒に訪れた南国の島の家々は明るい色に塗られていたのだろう。上五のカタカナ表記が雰囲気を伝えている
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秀逸5
【100】
縫ひ上げし衣を纏ひて針供養
武田順子
針を納める時に、その針で縫い上げた服を着て行ったのだろう。針への何よりの供養になったことであろう
入選
入 選 句
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【3】
入墨の腕に負け鶏抱かれけり
古谷彰宏
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【15】
神の木に吸ひ込まれゆく春の雪
田島かよ
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【31】
剪定の鋏の音の潔し
中内ひろこ
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【35】
転読の伴僧四人追儺式
小西俊主
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【37】
泥に舟押し上げ蓮刈りにけり
古谷多賀子
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【38】
本物の鉈の重さよ成木責
木村由希子
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【67】
托鉢に出づる山門長氷柱
古谷彰宏
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【69】
冬芽いたはりて電飾解きにけり
広田祝世
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【75】
葛桶の光反すや薄氷
(・・朝光返す・・)斎藤利明
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【80】
春泥のとばしり乾く干拓碑
平田冬か
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【84】
ぐりとぐら思ふ双子の冬帽子
木村由希子
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【94】
冬将軍鯖街道を北上す
近藤八重子
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【96】
この奥は熊出るといふ吉野かな
阿部由希子
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【102】
歌劇生雄々しく鬼を追ひにけり
広田祝世
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【107】
石垣にせり出す櫓冬日濃し
荻野隆子
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【123】
ぼたん雪鹿のまつ毛に消えにけり
西岡たか代
入選
佳 作 句
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【6】
一木の同心円に椿落つ
清水洋子
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【24】
大雪原彼方の蒼はオホーツク
中島 葵
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【27】
亀鳴いて石と化したる明日香かな
小林恕水
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【62】
枕木に春の旋律伯備線
吉浦 増
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【63】
白き羽根乗せてたゆたふ薄氷
鳥居範子
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【78】
足場組む工事冬芽のすれすれに
森田教子
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【90】
土と綱引きするやうや大根抜く
山崎圭子
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【97】
歌垣のありしてふ野に遊びけり
村手圭子
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【103】
集へるは晩学同士青き踏む
黒岩恵津子
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【106】
後ろ手に前へ前へと麦を踏む
角山隆英
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【108】
薄氷の縁にさざ波静まれり
栗原栄一
純一郎吟
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【57】
流氷の着岸を聞く雨水の日
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【68】
うたかたのうつしよはみな春の夢
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【124】
熊住むを諾ふ山の暗さかな