2024年11月16日~2024年12月15日締切分
森田 純一郎選(新ウェブ句会より)
特選 三句
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66
水取の護符とて厚く紙を漉く
広田祝世
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110
万両の一本に庭引き締まる
田島竹四
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75
さしのべし手に雪蛍ふつと消ゆ
山﨑圭子
秀逸 五句
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2
点滴の音なきリズム去年今年
田島もり
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18
ことごとく蛇籠破れて冬ざるる
古谷多賀子
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32
目に見えぬものに追はるる十二月
吉浦 増
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74
掌に掬ぶ亀の井冬ぬくし
斎藤利明
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112
文字一つ欠けたるネオン冬ざるる
(---欠けしネオンや----)稲垣美知子
特選 三句
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特選1
水取の護符とて厚く紙を漉く
広田祝世
昨年11月末に西脇俳句大会の前に、杉原紙の紙漉きを見学したが、今のIT時代にも古くからの手作業を守り続けていることに感銘を受けると共に、ある種求道者な作業であると感じた。東大寺のお水取という神聖な行事の護符に使う紙は厚く、また清く漉かれることであろう
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特選2
万両の一本に庭引き締まる
田島竹四
この句を見て、すぐに高取の青畝生家の万両を思った。今でも、訪れると庭を見せていただけるそうだが、以前に私が訪れた時も万両の実がなっていた。今年4月に満百歳となる作者の作と知って驚いたが、簡潔明瞭に季語の魅力を詠むことが出来ることは素晴らしいと思う
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特選3
さしのべし手に雪蛍ふつと消ゆ
山﨑圭子
雪蛍、つまり綿虫を詠んだ句は、これまでにも数多くある。しかし、掲句は「さしのべ」と「ふつと」の二つのひらがな表記によって、作者の感動が伝わるので特選に選んだ。今までにあったような平凡な光景でも、それを見た人の感動をストレートに詠めば読者の心に響くのである
秀逸 五句
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秀逸1
【2】
点滴の音なきリズム去年今年
田島もり
病院での年越しを詠んだものだろう。淡々とした表現から、一病を抱えたまま新年を迎えるという、ある種虚無的な境地が読者に伝わって来る
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秀逸2
【18】
ことごとく蛇籠破れて冬ざるる
古谷多賀子
河川工事などに使われる粗く編んだ籠に石を詰めたものを蛇籠という。それが「ことごとく」破れているというのだ。この上五によって光景が見事に伝わって来る
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秀逸3
【32】
目に見えぬものに追はるる十二月
吉浦 増
一年間を一生懸命に生き抜いた人でこそ詠める句だと思う。一年を締めくくるに当たり、出来るだけ完璧にしようという気持ちを持つ人ほど常に何かに追われている
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秀逸4
【74】
掌に掬ぶ亀の井冬ぬくし
斎藤利明
昨年末の写生会で明石を訪れた際に、「亀の水」の湧く井戸を訪れた。こうした固有名詞を詠み継ぐことが、挨拶の文芸である俳句には必要なことだと思う
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秀逸5
【112】
文字一つ欠けたるネオン冬ざるる
(---欠けしネオンや----)稲垣美知子
LEDに押され、都会からネオンが消えていっている。補修することなく点るネオンサインには、何かしら哀愁が漂う。都会詠としての冬ざれの句である
入選
入 選 句
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【3】
実寸の厩設へ降誕祭
中島 葵
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【5】
丹波路や庭のうちにも猪の罠
黒岩恵津子
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【10】
吉野建茶屋に葛湯を吹きにけり
阿部由希子
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【40】
「ノルウェーの森」のロケの野冬に入る
木村由希子
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【42】
冬日濃し均時差のある日時計に
武田順子
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【50】
開脚のポーズに蛸の干されけり
武田順子
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【57】
何やかや畑の物干す冬山家
山﨑圭子
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【64】
地震にも崩れぬ重石味噌仕込む
木村由希子
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【65】
大太鼓の響く南都やおん祭
小林恕水
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【71】
丁寧にブラシ掛けもし紙を干す
森田教子
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【81】
鶴啼いて寝覚むる北の大地かな
小林恕水
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【87】
山の辺の道の枝道笹子鳴く
(---------ふと笹子)宮原昭子
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【93】
避寒宿頭上に南十字星
(旅避寒-------)高橋宣子
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【97】
貴賓館万両どれも実のたわわ
平田冬か
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【102】
ぴかぴかの大魚解体年の市
西岡たか代
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【116】
廃れたる連句を惜しむ青畝の忌
古谷彰宏
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【118】
新句会立ち上げんとす青畝の忌
古谷彰宏
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【124】
紙を漉くかつて百軒今一軒
広田祝世
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【125】
数へ日の一日は定期診察日
小西俊主
入選
佳 作 句
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【1】
聖堂の扉に犬はべるクリスマス
前田野生子
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【4】
風に乗り光に乗りて銀杏散る
大久保佐貴玖
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【9】
右近像二つ建つ街聖夜来る
たなかしらほ
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【23】
線描画さながら蓮田枯れ尽くす
平田冬か
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【34】
節くれの手の囲みたる焚き火かな
(----が----昼焚き火)近藤八重子
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【49】
この年木いつも軍手の載せてあり
古谷多賀子
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【56】
白刃の鞘払ふごと葱出荷
野村親信
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【61】
闇汁のあとのおむすびうまきかな
(----------うまかりし)前田野生子
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【89】
数へ日や書込み増ゆる予定表
田島竹四
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【98】
異国語の舸子の降り来る鮪船
清水洋子
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【107】
貴婦人のごとく丹頂歩み初む
小林恕水
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【113】
昨日より又も減りたる実万両
近藤八重子
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【127】
いつまでも鳶の旋回小六月
西本陽子
純一郎吟
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【48】
舫はるる船打ち続け寒の雨
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【55】
播州へ一路時雨のハイウェイ
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【134】
帆柱の軋みて冬の船溜り