
2024年12月16日~2025年1月15日締切分
森田 純一郎選(新ウェブ句会より)
特選 三句
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2
冬の虹誰にも告げず逝きし人
吉浦 増
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89
川の水減るほど吸ひて出初式
大久保佐貴玖
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115
埋火や遠き日のこと搔き起こし
西岡たか代
秀逸 五句
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5
返り花見知らぬ人と見上げけり
稲垣美知子
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25
はや花舗に春の気配の匂ひ満つ
阿部由希子
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61
蒸し上がり一見牛蒡めく楮
古谷多賀子
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97
四世紀ごろは宮殿いま枯野
村手圭子
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120
夫のゐぬ正月のこの寂しさよ
足立 恵
特選 三句
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特選1
冬の虹誰にも告げず逝きし人
吉浦 増
おそらく昨年11月に若くして急逝した阪野雅晴氏を偲んでの句であると思う。冬の虹という季語との取合せ句であるが、この句の場合はこの季語以外考えられない。美しくも儚い冬の虹を雅晴という一俳人の逝去に合わせて詠んだことにより、作者の深い悲しみが伝わってくる。
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特選2
川の水減るほど吸ひて出初式
大久保佐貴玖
出初式では、消火用の水を豪快なほど贅沢に使う。この句では、その様子を何と川の水が減るほど消防車のホースが吸っていると詠んでいる。実際には、そんなことはないと思うのだが、作者は直感的にそのように感じたのであろう。水不足の現代社会においては実感がある。
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特選3
埋火や遠き日のこと搔き起こし
西岡たか代
埋火(うづみび)とは、冬の季語で灰に埋めた炭火のことである。茶道においては、大晦日の夕食後に除夜釜のお茶を飲み、その後炉中を整えて埋火をする。この句では、作者は炉の灰を掻き回すときに遠い昔の思い出に耽っていたのだろう。
秀逸 五句
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秀逸1
【5】
返り花見知らぬ人と見上げけり
稲垣美知子
返り花を見上げた時に、横で知らない人も見上げていたのだろう。淡々とした写生句のよろしさがある。
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秀逸2
【25】
はや花舗に春の気配の匂ひ満つ
阿部由希子
花屋に早くも春の花が並べられていたのだろう。この句も客観的に詠まれていて季節の感動が伝わる。
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秀逸3
【61】
蒸し上がり一見牛蒡めく楮
古谷多賀子
蒸し上がった楮は色もなく、とても和紙になるとは思えない。牛蒡のようだと作者は直感的に詠んだのだろう。
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秀逸4
【97】
四世紀ごろは宮殿いま枯野
村手圭子
二千年近く昔に宮殿だったところが今は枯野になっている。遺跡の多い地に住む作者の実感だろう。
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秀逸5
【120】
夫のゐぬ正月のこの寂しさよ
足立 恵
愛する伴侶を亡くした正月の寂しさを何の技巧も凝らさず詠んでいる。悲しみの深さが伝わってくる。
入選
入 選 句
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【10】
由緒ある寺とは知らず日向ぼこ
大久保佐貴玖
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【23】
夕暮れに影絵となるや枯柳
(・・・・・・見れば・・)菅原和絵
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【29】
ケーキひとつ買うてわたしのクリスマス
(・・・・・買ひて・・・・・・・・)中内ひろこ
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【36】
初場所の初日はやくも札止めに
たなかしらほ
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【39】
沈下橋袂へ迫る野焼きの火
清水洋子
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【47】
気にかかる医師の一言窓は雪
宮原昭子
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【52】
初旅やからころころと湯場の下駄
西岡たか代
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【57】
古傷の数へ切れぬを成木責
木村由希子
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【64】
着膨れの友と着膨れ永平寺
西岡たか代
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【74】
笛藤を構ふる女人弓始
古谷彰宏
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【78】
冬ざれの若草山や点火まつ
足立 恵
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【83】
初凪や水かげろふの船溜り
斎藤利明
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【86】
初稽古太平洋へ鬨上ぐる
小林恕水
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【93】
足裏に玉砂利尖る寒詣
平田冬か
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【111】
春愁や好きな刺繍をしてをれど
糸賀千代
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【113】
玉砂利に靴の埋まりて初祓
安田純子
入選
佳 作 句
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【1】
吸ひつけるごとき着地や独楽を打つ
木村由希子
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【8】
伊勢海老の髭が長いと切られをり
(・・・・・・・ひ・・・・・)前川 勝
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【16】
めでたさや一膳増したる柳箸
小西俊主
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【17】
斎王のみそぎの水辺若菜摘む
平田冬か
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【28】
熱燗や反省会と称しては
村手圭子
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【53】
ラガーらのスクラム突とボール出づ
(・・・・・・・・の中つとボール)山崎圭子
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【67】
この位置のこの場所が好き初景色
迫田斗未子
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【68】
竜の玉見つけ誰かに知らせたく
宮原昭子
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【88】
雪吊の縄爪弾くや能登の風
小林恕水
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【90】
あらかたは無用の長物煤払ひ
(・・・・・・・・・・・い)近藤八重子
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【91】
背伸びしてやつと結へたり初みくじ
宮原昭子
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【102】
勅使道箒目高く淑気満つ
角山隆英
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【107】
初旅や富士を間近とアナウンス
迫田斗未子
純一郎吟
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【30】
久米寺へ踏切越ゆる淑気かな
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【79】
手火鉢は隠し吉兆商へり
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【103】
靴沈むほどなる欅落葉かな